赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
行動食は、エネルギー補給するための食料だ。
たくさんのエネルギーを消費する登山では、低血糖に陥ると集中力が切れ、
思わぬ転倒につながることもある。
補給しないまま歩き続ければ、シャリバテ※になる。
(※ 飯が足りずバテること)
ガス欠にならぬよう、行動中も積極的にエネルギーを取りつづける必要がある。
「偉いぞたま!。
お前のピーナツ嫌いは、私たちのピンチを救ってくれる切り札になる!」
恭子がとつぜん、大きな歓声をあげる。
何のことだかさっぱりわからず、たまはきょとんと恭子の顔を見つめる。
清子にも、まったく意味がわからない。
それでもたまの身体を拭く手を止め、恭子の顔を振りかえる。
「いま、行動食のカキのタネを、つまみ食いしたって言ったわね、たま。
ピーナツだけを食べずに、来る道々、捨ててきたんでしょ。
その匂いを辿れば、避難小屋まで戻れるかもしれないわ!」
あっ・・・事の重大性に、清子も気がつく。
たまのつまみ食いが、こんなところで役にたった。
恭子が結んできた目印のオレンジ色のテープは、濃密な霧に隠れて、
現状ではまったく役に立たない。
しかし。ここまでの道筋に、たまが捨ててきたピーナツが点々と残っている。
「すごいぞ、たま。お前はやっぱりさいわいをもたらす奇跡の三毛猫だ。
嵐が来る前に、避難小屋へ戻ることができるかもしれない。
たま。お前の出番がやってきた。
道に捨ててきたピーナツの匂いを、かぎ分けておくれ!」
『えっ、この悪天候の中で、ピーナツのかすかな匂いをかぎわけるのか。
無茶なことを、平然と言うなぁ恭子のやつも。
視界の効かない霧の中だぜ。
おまけに油断していると頭上で、いきなり雷鳴が轟く最悪の
コンデイションだ。
こんな中、おいらに仕事をさせるつもりかよ。酒蔵の10代目は・・・」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平