赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (67)
たまの嗅覚
たまが、清子の顔をペロリと舐める。
寒いのだろうか。全身が霧から落ちたしずくで濡れている。
『寒いんだろう、お前。いま、拭いてあげるからね』
清子が、リュックサックの中から乾いたあたらしいタオルを取り出す。
そのとき。ガサッと小さな音を立てて、ビニールの袋が地面に落ちた。
落ちたのは、行動食の柿の種の袋だ。
袋の隅に小さな穴が開いている。
『あら・・・落ちたのは行動食のカキのタネです。
袋の下に、小さな穴が開いていますねぇ。
たま、お前、もしかして、リュックの中でこっそりこれを
かじっていたのかい?』
『悪いかよ。腹が減ったもんで、道々、おいらが食べた。
でもよう。香ばしい醤油の匂いのするカキのタネは、好物だ。
だけど固いだけのピーナツは苦手だ。
なんで柿の種に、わざわざピーナツなんか混ぜるんだろうな。
人間のすることは良くわからねぇ。
だからよ。おいら、ピーナツは嫌いだからぜんぶ、途中で捨ててきた』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平