赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
「お姉ちゃん。まるで、日暮れのような暗さになってきました。
いったい、どうしたというのでしょう?」
「発達した雷雲がやってきたのか、それとも低気圧の雲が、
私たちの頭上にやってきたか、そのどちらかだろう。
残念ながら事態はどうやら、楽観を許さなくなってきたようだね、清子」
「楽観を許さない事態・・・・?」
寝袋の中で、清子が身体を固くする。
清子の顔に、あきらかな不安と恐怖の色が浮かんできた。
ハンカチを取り出した恭子が、そっと清子の濡れた顔へあてる。
「怖くないよ、清子。
ほら。綺麗なお前の顔が、霧雨に濡れてしまって台無しだ。
女はどんな時でも、身だしなみを忘れちゃいけない。
正直に言うけどね。わたしたちのピンチは、まだ、始まったばかりだ。
この先がどうなるのか、わたしにはわからない。
何ができるのかもわからない。
でもね。どうしたら助かるのか、そのことをいま一生懸命、考えている」
「助かるよね、わたしたち・・・」
「きっと助かる。
でもね今は、とにかく落ち着いて、じっくり耐えて、この場で踏ん張ろう。
きっとどこかに、助かる道は有る。
いまの私たちには、まだ、助かる道が見えていないだけのことです。
それを信じて迂闊に動かず、じっと耐えて行動しょうね。清子」
不安そうな恭子の瞳が、暗さが増していく頭上を見上げる。
ガスが漂よう空は、時間とともに明るさが消えていく。
秋の落日のような速さで、2人のまわりが暗くなっていく。
遠くに聞こえていた雷鳴が、至近距離で大きく響くようになってきた。
(ホントに助かるんだろうか、わたしたち・・・)
恭子の両手が、小刻みに震えている清子の身体をしっかり抱きしめる。
(67)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平