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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70

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 ほっとした表情を見せた登山客が、ようやく安堵の胸をなでおろす。

 「麓の気象台から、なにか言って来たか?」


 作業員のひとりが、電話を終えたひげの管理人へ声をかける。
『芳(かんば)しくない。悪天候が長引きそうだということだ』
ヒゲの管理人が難しい顔で、ぐるりと一同を見回す。

 「気象がめまぐるしく、変っているそうだ。
 やっかいなことに、日本海上にまた新しい低気圧が発生した。
 こいつが、今の低気圧に続いてこっちへ移動してくる。
 となると天候の回復は、当初の予定以上に長引くことになりそうだ」

 「天候は悪くなる一方か。そうなると長い籠城戦になる。
 食糧はどうだ。充分にあるか。長期戦に耐えられそうか?」

 「数日前に荷物を担ぎ上げたばかりだ。
 この人数になっても、一週間くらいなら、底をつくことはないだろう。
 ただ、少しばかり気になることがある・・・・」


 「気になること・・・?。何だ、気になることと言うのは。。
 1時間ほど前に下っていった、例の、あの女の子達のことが気になるのか?」
 
 「うん。無事に下まで降りきってくれていると、いいんだがなぁ。
 どうも微妙なような気がしてならない。
 立ち往生したとしても、どこかで無事に避難してくれているといいんだがな」

 雷鳴がとどろく窓の外を見つめながら、ヒゲの管理人がため息を漏らす。
ヒゲの管理人が窓の外へ視線を走らせていた、ちょうどその頃。
寝袋の中に潜り込み、青いビニールシートで雨よけを作った恭子と清子が
徐々に近づいてくる雷鳴に、不安を覚えていた。
これ以上密着出来ないほど、寝袋の中で、お互いの身体を寄せ合っていた。

 ガスが薄れていく気配は無い。
冷え込んできた空気が2人の顔に、冷たい水滴を落としていく。
昼の12時を過ぎたばかりだというのに、まるで夜が迫って来たような暗さが、
2人の頭上に降りてきた。