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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70

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 「たまが、歩きはじめました!。何か嗅ぎつけたみたい!」

 清子が、たまの真横に座り込む。
日本海からの突風を防ぐためだ。恭子も清子の前方に身体を倒して横になる。

 「頑張れたま。いいぞ、その調子だ!」

 『風邪をひいたくらいで、負けてたまるかよ。
 避難小屋の方向を嗅ぎ分けられるのは、おいらの鼻だけだ。
 任務を達成することができたら、おいらは、2人のお姫様の救世主だ。
 礼はたっぷり、はずんでもらうからな。
 あっ・・・あれ。どうしたんだろう、おいら。
 なんだか急に眠たくなってきたぞ・・・おかしいなぁ』

 たまの足が、遅くなる。
やがてピタリと止まる。もう1歩も先へすすめなくなる。
風邪をひいたため、ついに小さな身体のすべての力が尽きた。

 『たまっ、たまったら、どうしたの。
 もうすこしだというのに。ねぇ、お願いだから頑張ってよ・・・』

 必死で呼びかける清子の声が、遠くへ去っていく。
『駄目だ、おいらもう、限界だぁ・・・』たまの意識が遠のいていく。

 たまが清子の手の中で意識を失ったちょうどその頃。
避難小屋で動きがあった。
2つ目の低気圧が急速に成長しながら接近している、という情報を受け取った
ひげの管理人が、捜索のために立ち上がる。

 「作業員のお2人と、ベテランの源さん、それから俺の4人で、
 彼女たちの捜索に行く。
 残ったみなさんは手分けして、彼女たちを温める準備をしておいてください。
 彼女たちは表で、長い時間、濡れ鼠になっている。
 お風呂と暖かい食事の支度をお願いします」

 避難小屋は嵐から逃れてきた人たちで、10数名に膨れあがっている。
『草原は広すぎる。俺たちも行こう』相次いで立ち上がる登山客を、
ひげの管理人が手で止める。

 「気持ちは嬉しい。だがこの悪天候だ。2重遭難の危険性もある。
 ここで待機してくれ。
 本格的に雨が降り始める前に、なんとか見つけだしてくる」

 気を付けて行けよ、という声に送られて4人が表に出る。

 「とりあえず、あの子たちと行き会った場所まで、俺たちが先導する。
 その先はどっちへ行ったかは不明だ。
 だが、語らいの丘でヒメサユリが満開だと教えたから、
 そっちまで足を伸ばした可能性が、高いと思う」

 「あのあたりは、谷に向かって急斜面だ。
 身動きせず、どこかで、じっと我慢してくれていると有難い。
 いずれにしても前の見えない濃密なガスだ。
 慣れているの俺たちにしても、今日のこいつは難敵だ。
 はぐれないように声をかけ合いながら、慎重に前進していこうぜ」

(70)へつづく