赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
たまの機転で、尾根の登山道までたどり着くことができた。
しかしそこで2度目のピンチがやってきた。
右へ行くのか、左へすすむべきか、方向の選択ができない。
避難小屋がどちらの方向にあるのか、まったく判断がつかない。
たまが、必死の形相で地面に這いつくばる。
油断すると、強風に吹き飛ばされてしまうからだ。
強い風に負けないよう、短い4本の足を精一杯、踏ん張りつづける。
尾根の風はとつぜん、方向を変える。
右から吹いてきた風が、いきなり向きを変えて今度は、真正面から
吹き付けてくる。
『よくわかんねぇなぁ・・・
こっちの方角だと思うけど、なかなか、肝心のピーナッツが見当たらねぇ。
この風で飛ばされちまったのかなぁ。
ひとつでも見つかれば、方向が決められるのになぁ・・・』
たまの嗅覚をあざ笑うように、くるくると強風が方向を変える。
また風が向きを変えた。
そのとき。ほんのかすかに、カツオ節の匂いが混じってきた。
『えっ。おいらの大好物のカツオ節の匂いだ・・・
ということは、避難小屋でつくっている味噌汁の匂いだな』
たまのひげが、ピクリと動く。
『こっちだ。たぶん。間違いなく・・・』
吹き飛ばされないよう小さい足を踏ん張りながら、たまが風に向かって
歩き出す。
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平