天国に咲く花
次の日、学校の帰り、潤は健太とともに健太の家に寄った。中に入った潤はその散らかり放題の部屋に内心驚きながらも、平静を装って椅子に座った。
「驚いただろう? 男だけだとこんな有様さ。奈津美が閉じこもってから一週間でこんなだよ」
健太はテーブルの上を片付けながら言った。それを手伝いながら潤が聞いた。
「何か進展は?」
「何もない、もうお手上げさ」
潤は手を止め覚悟を決めた。
「健太、ちょっと座れよ。これから話すことだけど、お前が信じるかどうか俺にはわからない。でもどうしても聞いてもらいたいんだ」
健太はただならぬ潤の様子にちょっと驚いた表情を見せながら、椅子に腰かけた。
「実は――俺の姉貴は不思議な力を持っていて――困っている人を助けることができるんだ…… それで――その――姉貴に会って相談してみないか……」
潤の声はしだいに小さくなっていった。友だちを失うかもしれない、そんな気がして顔は下を向いたままだった。カウンセラーだと言うはずが、なぜか正直な思いが口から出てしまった。
沈黙の時間が潤には妙に長く感じられたが、実際はほんの数秒で健太は、
「会わせてくれよ」
と真剣なまなざしで答えた。
窓からやわらかな陽が射す午後、山奥の家のテーブルを挟んで、桃の前に潤と健太が座っていた。
「お話はわかったわ。二人ともここでちょっと待ってて」
そう言い残すと、桃は外へ出て行った。
「きれいでやさしそうな姉さんだな」
健太が言った。
「占いばあさんでも想像してたか?」
「まあな」
しばらくして桃が戻ってきた。その顔には困惑の表情が浮かんでいた。
「健太くん、あなたに話していいものかどうか…… でも奈津美さんが知ってしまった以上、あなたも知っておくべきだと思うので話すわね。もう十八の男だからどんなことでも受け止められると信じるわ。
奈津美さんはね、お父さんが実の父親ではないと思っているの」
「えっ!」
二人の高校生は思わず驚きの声を上げた。