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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 61~65

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 『それだけのことが言えれば、とりあえず無事の証拠だ、たま。
 昔から地震・雷・火事・親父というけど、やっぱり・・・突然の雷は、
 怖いものがあります』

 「よいしょ」身体を起こた恭子が、くにゃりと曲がってしまった
帽子のつばをもとへ戻す。
清子の懐から鼻の頭にヒメサユリの花びらをつけたたまが、のそりと現れる。
『清子よう。おいらの鼻が、なんだか、甘美すぎる匂いでクラクラするぞ。
なんだろう。この初めて嗅ぐ、優雅な香水のような香りは・・・』
鼻息にあおられて、花びらがヒラリと濡れた地面へ落ちていく。


 犬は匂いを辿って獲物を見つける。猫は目と耳を使って獲物を捉える。
犬ほどではないが、猫の嗅覚も人と比べると、数万倍から数十万倍、
優秀と言われている。
事実。ネコは窒素化合物を含むニオイに敏感に反応する。
特にアンモニア臭が漂う腐った餌は、瞬時に嗅ぎ分ける。

 ネコは、腎臓や肝臓に多大な負担をかける身体の構造をしている。
毒素を分解するための内臓を、持っていないからだ。
そのためネコは、脂肪の中に含まれているかすかなニオイの中から、
自分の食べ物として適しているかどうかを、敏感に感知することができる。
鮮度を、一瞬のうちに嗅ぎ分ける。

 『食べられるかどうかは別にして、いまの匂いは、ヒメサユリです。
 おや。黄色い花粉が鼻の頭に着いていますねぇ。
 あはは。よく見れば体中、ヒメサユリの花粉が付いて、真っ黄色だ。
 さっき倒れた時、ヒメサユリの花を下敷きにしたようです。
 ヒメサユリには、気の毒なことをいたしました。
 うふふ。お前。黄色が1色増えたことで、いまは三毛猫ではなくて、
 四毛猫ですねぇ!』