赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 61~65
『よせよ。四毛はまずい、縁起でもねぇ。
それよりさ。さっき言っていた地震、雷、火事、親父という順番はわかるが、
なんで4番目に、親父が入るんだ?。
昔のオヤジってのは、怖い存在だったと聞いた覚えはあるけど、
なんで天災ばかりがならんでいる4番目に、その親父が入ってくるんだ』
『そうだね。3番までは天災だけど、4つ目は確かに人間です。
どうしてだろうね。あたしにもわかりません』
「清子。それは人間のオヤジじゃなくて、台風のことだ。
昔は台風のことを、大山風(おおやまじ)と呼んでいた。
いつの頃からかそれを、「おやじ」と呼び始めた。
だから、地震・雷・火事・台風という意味で、すべて天災を表しているの。
昭和の時代に、カミナリ親父なんてのがいたわね。
ずいぶん身勝手に威張り散らして、家族には、怖い存在だったようです。
今は男もずいぶん軟弱化したので、そろそろ昔のように
大山風(おおやまじ)と、直したほうがいいようです』
『なんだぁ。やっぱり台風のことかよ。可笑しいと思っていたが、
なるほどね』
ポツリとつぶやいたたまが、ピクリとヒゲの先端を震わせる。
『何?。また、雷がやってくるの、たま?』清子がたまに顔を近づける。
その瞬間。真っ白いガスの空間に、眩しい閃光が走る。
『来る!』身構えた2人が、両耳を抑えて防御の姿勢をとる。
2秒、3秒・・・・こくこくと時間が経過していく。
しかし、雷鳴は轟かない。
『おかしいですねぇ・・・』恐る恐る清子が顔を上げた瞬間。
油断を狙い済ませたかのように、大音響が、2人の真上から落ちてきた。
「音速は今時期の今の温度で、毎秒340m。
10秒以上かかっているから、雷は3キロから3、5キロの距離まで来ている。
音が鳴るたび、雷は確実にここへ近づいている。
ここまで到達するのは、もう、時間の問題かもしれないな・・・・」
距離計算をした恭子が、額にじわりと、焦りの色を浮かべた。
(66)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 61~65 作家名:落合順平