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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 61~65

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (64)
 まるでミルクの水の底

 「お姉ちゃん。周りじゅうが真っ白です。
 宇宙空間に漂っているか、ミルクの水の底にいるような感じがします」

 自分の指先さえ見えなくなるほどの、濃密なガスの中。
清子が、自分に向ってつぶやく。
『ミルクの水の底か。とつぜん上手いことを言うね。清子も』
体を寄せた恭子が水滴が滑り落ちてくる帽子のひさしを、阿弥陀に持ち上げる。

 谷底から吹き上げてくる風が、きゅうに静かになって来た。
ヒメサユリの葉の揺れる音が消えた。
語らいの丘の斜面一帯に、物音ひとつ聞こえない静寂がやって来た。

 動きを止めたガスから、こまかいな水滴が舞い降りてくる。
まとわり続ける水滴は、寝袋の上に薄い水の膜を作る。
青いビニールシートから、時々、チロリと音を立てて水滴が滑り落ちてくる。