短編集13(過去作品)
安らかな気持ちに包まれた後、私は未亡人と一つになり、そしてそのまま未亡人と永遠の旅に出る。そんな感覚を嵐の中に見たのだった。
ネコ型の私は西洋館に佇む未亡人から離れることができない。美代子という妻がいるにもかかわらずである。そして今、妻の美代子は私の子供を身ごもっている……。
しかしこの嵐が私を呪縛から救ってくれるのだ。それも美代子の私に対する思いからなのか、母親が私を救ってくれようとしたのか分からない。宮崎で見た白いワンピースの女性、それはきっと私を身ごもっていた頃の母の姿にそっくりだったことだろう。
「美代子に対する思いと、母を感じることは、ネコが初めて持った意志だったのだ」
足早に通り過ぎていく雲をホテルの窓から見つめながら、自分が今感じている思いを呟いていた……。
( 完 )
作品名:短編集13(過去作品) 作家名:森本晃次