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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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初めて試合で中ったと、郁は涙ながらに喜んでいた。たったの一中。だけど、ここから自信が始まっていくのだ。瑞も負けていられない。

「おまえ今でも、一之瀬の好きなやつ気になってる?」

伊吹が唐突に言った。

「え?」
「せいぜい悩むがいいよ」

そんなことを言う。どういう意味かはわからないが、ものすごく優しい顔をしているから、意地悪なのか何なのかわからんくなる瑞だ。

「今夜は、瑞が借りてきてくれた映画でも見てゆっくりするよ。疲れたな」

そう言って伊吹も目を閉じたのだった。満足そうに。
瑞は一人、窓の外を眺める。

(…あれから、一之瀬化粧してない)

あのナンパ事件から、彼女は化粧をやめた。瑞の言ったとおりに。あれは本当に、なんというか、瑞の勝手な感情から出た言葉だったから、少し後ろめたい気もしている。好きなひとにはかわいいと思ってもらいたいと、彼女はそう言ったから。

(でも、一之瀬この頃嬉しそう)

化粧をしてなくても、ニコニコと楽しそうな笑顔を見せてくれているから、化粧をやめたことを(瑞にやめさせられたことを)怒ってはいないのかもしれない。


彼女の本当の笑顔の理由を、瑞は知らない。





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