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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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帰りの電車の中で、一年生は肩を寄せ合ってウトウトしている。終点の町へ帰る二両編成の電車には乗客は殆どおらず、弓道部の面々は気が抜けたように椅子に身を預けている。顧問もだ。みんながみんなホッとしたのだと思う。

「一年爆睡してますね。朝から気を張ってたからなあ」
「おまえは元気だな。気が緩んでたのか?」
「違いますよ!俺だってすごい緊張感をもってですね…」

瑞は伊吹の隣で慌ててそういう。主将は笑っているけれど、このひとこそしんどかっただろうと思う。今回の試合に至るまで、チーム編成に頭を悩ませ、郁をはじめとする一年生一人ひとりの気持ちに沿いながら指導を続けていた。その傍らで自分の練習もあっただろうし、副主将として瑞も手伝いや雑務はしたけれど、果たしてそれがどれだけこのひとの力になっただろうかと反省する。

「でも…今回ほんとだめだめだったす、すみません」
「おまえ団体戦はよかったんだけどな。個人戦は邪念入ってたなあ。私情挟みまくり」

けらけら笑われて、ああおっしゃる通りですと顔を覆う。恥ずかしい。

「でも、ありがとう。主将戦は力もらった」

窓の外の雪景色を眺めたまま言うのは、照れ隠しらしい。

「あれは俺らの呪いじゃなくて、先輩の実力だと思います」

動揺が、ないはずない状況だったのに。気持ちが、強いのだ。どんな状況でも心が安定しているということ。安定させられるということ。改めて、自分の先輩を誇りに思う。

そして同級生の頑張りも、瑞は誇りに思っていた。

「一之瀬の早気が、よくなってましたね」
「うん。あいつほんとすごい。絶対克服できると思う」

郁は葉山の肩にもたれてクークー寝息をたてている。すっかり安心したようだ。