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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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透き通る風




団体戦の最終グループ。瑞チームの相手は、強豪校の主将チームだ。しかし瑞は、そんなものに心を乱されるような男ではなかった。応援席の部員らは、伊吹を含めて息を呑んでいた。

(すごいな…周囲に全く気を散らしてない)

瑞の集中が神がかっている。明らかに、他校の選手は雰囲気にのまれていた。いつもの実力を出せずにいる。瑞の放つ、ひときわ鋭い弦音。ぶれないまっすぐな視線。堂々とした背中。瑞の前で弓を引いていた他校生は、背後の気配に動揺したのか、番える前に矢を落としてしまっている。

「あいつどうしたんだ、今日は。ものすごい気迫なんだが…」
「…さあ」

顧問も唸るその射。俺の元カノへの複雑な対抗心ですとは答えられない伊吹だった。バシーン!と、すさまじい音で的を貫く瑞の矢。

「西高レギュラーを前に皆中だぜ」
「沓高の副将まじでやべえ」
「かっこいい…」

応援席がざわめいている。瑞の存在感は、試合のたびに増していた。技術はもちろん、泰然としたゆるぎない姿勢や所作は、見るものの心をとらえた。

「見事だったな」
「ありがとうございます。俺今日は絶対負けないんで」

クールに顧問にそう返した瑞だったのだが…。


・・・・・


「うわあ、×みっつかあ…」
「なんか安心したわ。須丸でも調子悪いときあんだな」
「くっ…」

昼食後の個人戦。瑞は七尾第一の主将を含めた二年生を相手に惨敗していた。

「副将があんな悔しそうなの珍しいよね」

葉山がそう言って、伊吹もそう思うと返した。ばかだな、私情挟みすぎだろう。