⑧残念王子と闇のマル
頭領がやってんのに、なんでダメって思ってんの?」
麻流は、唇をきつく噛みしめたまま頭をあげない。
黙り込む麻流を暫く見つめていた空は、麻流の頭を指で突っついた。
「自白の術、かけちゃうよ♪」
空の言葉に、麻流は慌てて頭を上げて後ろへ飛び退く。
その反応に、空は笑みを深める。
「ん?」
穏やかな表情で言葉を促す空をジッと見つめていた麻流は、喉をごくりと鳴らして唇を噛んだ。
「…王子のことを、思い出せないのです。」
絞り出すように紡がれた言葉は、消えそうに掠れている。
「だろうね。」
さもあらんというように頷く空に、麻流は目を丸くした。
「俺が、術かけてっからさ。」
「!?」
驚いて息をのむ麻流を見つめながら、空は長い脚を高く組む。
「だからさ、思い出さなくていいんじゃね?」
空の意図がわからず、麻流は困惑した表情を浮かべた。
作品名:⑧残念王子と闇のマル 作家名:しずか