短編集12(過去作品)
――スナックで女性と一緒に寄り添うように呑んでいた男――
やっと思い出すことができた。
その人は決して私を見ることはなかった。いつも無視しているのではないかと思っていたが、よく考えれば、私の存在に気がついていないような雰囲気すらある。
奈緒美とまみが私の中で決して重ならないように、私とその男も決して一緒にはできないのだ。無意識ではあるが、その男は私のことを知っているのかも知れない。
そう、一番私のことを知っている、将来の私本人なのかも知れない……。
( 完 )
作品名:短編集12(過去作品) 作家名:森本晃次