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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 56~60

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 トントンと階段を下りかけた管理人が途中で、立ち止まる。

 「そうだ。表の雲行きが怪しくなってきた。
 よかったねぇ、お嬢さんたち。
 この先の一ノ王子でテントを張らなくてさぁ。
 ここは雷の通り道だ。
 雷なんかちっとも珍しいことじゃないがお2人さんも、
 ヘソを取られないよう、せいぜい気をつけてくれよ。
 じゃあな、またあとで」

 「一の王子って?」
 
 「ここから150mほど上にある、稜線上のテント場さ。
 登ってくる途中で発達した積乱雲を見たけど、やっぱり、雷さんの襲来か。
 初夜からいきなり雷の洗礼を受けるとは、清子もついているねぇ。
 さては山の神に好かれたのかな?。もしかして。うっふふ」

 「雷さまですか!。
 恭子お姉さんは、怖くないのですか?」

 「山の雷は怖いさ、誰だって。
 頭の上だけじゃないんだよ。足元や、四方八方でガラガラ鳴るんだもの。
 テントの中にいたんじゃ、生きた心地なんかしないわ。
 もっとも山小屋の中に居ても、それは同じことだけどねぇ」

 恭子の説明が終わらないうち、山小屋の窓をいきなり閃光が走る。
『あっ、』清子が窓の外へ目をやった瞬間。
バリバリという激しい音が、空気を切り裂く。
続けてドッカ~ンという落雷の大音響が、2人の耳を直撃する。
『きゃ~ぁ』悲鳴を上げた清子が、恭子の胸へ飛び込む。
夏用の寝袋を広げた恭子が、清子を抱きとめながら、素早く頭から被る。

 やがて大粒の雨が、屋根を激しく叩きはじめる。
恭子の懐で清子が、ウッ~声を上げてとうめいたとき、すでに山小屋は
全方位を雷雲に取り囲まれている。
上から下から、右から左から、ゴロゴロゴロ~ピカッ!ドッカ~ン!!
ピカッ!ドッカン!ドッカン!。またゴロゴロ~ピカッ~・・・
鼓膜の保護のため、耳に両手を当てて恭子の胸の中で背中を丸めていた清子が、
少し離れたところできょとんとしているたまに、ようやく気がつく。