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選び取り

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 では、次は優一さんにお伺いいたしましょうか。

 はい、「冥菜の無事を願うなら、なぜ「選び取り」をさせてこの復讐に巻き込むんだ? ボタンを押す順番をつけるのは、人が怖がるさまを見たいからか?」ということですね。

 まず、始めのご質問についてですが、私は冥菜ちゃんを巻き込んだとは思っておりません。確かに一見すると、冥菜ちゃんは今回の復讐に重要な役割を負っているように見えるでしょう。しかし、考えてください。必ずしも冥菜ちゃんの「選び取り」である必要はないのです。
 例えば、三つの電話を皆さんに割り当てて、着信があった順番に復讐を行っても全く問題はありません。スーパーの監視カメラで三つのレジを写して、お客さんがどのレジに入ってくるかでも構いません。「選び取り」を用いたとしても、冥菜ちゃんではなく別の赤ちゃんでも全く支障はないのです。要するに、不公平ではない形で、皆さんへの復讐を実行する順番と、実行する時間が決まればそれで良いのです。
 では、なぜ冥菜ちゃんによる「選び取り」を選んだか。これから身寄りがなくなってしまう冥菜ちゃんに、文才も商才もお金も得てほしい、そんな気持ちもないわけではありませんが、いくらなんでもそれは欲張りというものでしょう。どちらかというと、皆さんのことを考えてこの方法を選んだ感があります。
 この方法なら、皆さんが今際の際まで冥菜ちゃんの無事を確認できるだろう、と考えたからです。やはり、冥菜ちゃんの安否は、ご家族である皆さんなら気になるだろうと思います。それに、なんと言ってもかわいい盛りです。片時も目を離したくないと思います。そのため、「選び取り」の形を取ることで、皆さんがそれこそ本当に最期の瞬間まで冥菜ちゃんを見ていられるようにしたのです。
 この件は、押し付けがましくなると思いましたので、私の方からはご説明いたしませんでした。復讐をする私が「冥菜ちゃんをずっと見ていられるようにしたから感謝しろ」と言うのは何か滑稽です。それに、この方が良いだろうと思っているのは私だけで、皆さんがどう思うかはわかりませんから。

 ただ、私が冥菜ちゃんを巻き込んでいないとどんなにここで言い張っても、肝心の冥菜ちゃん自身がどう思うかは、もちろん私にはわかりません。
 例えば、皆さんのうちお一人への復讐が終わった後、警察が踏み込んできたような場合を想定します。その場合、私は復讐を断念して、残った二人が助かるという展開になるわけです。こんな時、成長した冥菜ちゃんは、「もう少し私がアイテムを取るのが遅ければ、最初の一人も死ななかったかも」と悔やむかもしれません。その時は、生き残った方が言ってあげてください。「城山の馬鹿のせいだ」と。
 その時、私は獄に繋がれているのか、すでにこの世に居ないのかはわかりません。しかし、とにかく全力で私のせいにしていただいてかまいません。いや、私のせいなんですけれども。
 率直に言って、この状況で冥菜ちゃんを犯罪者だと思う人間は、多くないと思います。分別のつかない子供ならわかりませんが、良い大人がこの件で冥菜ちゃんを殺人犯扱いするほど、世間は愚かではないはずです。必ず、悪いのは実行者であるこの私になると信じています。
 それは、私が復讐を完遂できた場合でも何も変わらないだろうと思います。もちろん、先ほども話しましたように、冥菜ちゃんにはここでの出来事はまず知る事のないように私の方で計画を立てております。先のように復讐が中途で頓挫した場合、冥菜ちゃんが真実を知る可能性は高いですが、復讐を遂げることができれば、冥菜ちゃんは何も知る事無く、一生を送ることができる可能性が高いでしょう。しかしそれでも、冥菜ちゃんが知ってしまったら? 私も正直、この時ばかりは神仏を呪いたくなるかもしれません。しかしそれでも、きっと冥菜ちゃんが幸せな人生を送る事ができるよう、周りの人々が助けてくれると思いますし、冥菜ちゃん自身もきっと乗り越えられるのではないでしょうか。他人任せで大変申し訳ありませんが、こう思える程度には、私は人間を信じておりますもので。


作品名:選び取り 作家名:六色塔