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選び取り

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 警察や探偵など、この復讐を妨害する者がこの場に踏み込んだ場合についてお話いたします。前提として、この説明中も、「選び取り」の最中も、他ならぬ私自身が皆さんの生殺与奪を握るボタンを所持している状況です。つまり、何者かに踏み込まれたという事態に私が気づき次第、皆さんの命を奪う事は容易です。しかし、「侵入者が来たから復讐を急いで終わらせてしまえ」というのは、私は違うと考えます。邪魔者にこの場所に来られた時点で敗北です。そう考えるべきだと思っております。
 そのため、私としてはあまり考えたくありませんが、そのような事態が発生した場合、私は復讐を断念し、生存している方を解放した後、侵入者に私の身を委ねる意向であることを表明いたします。もちろん、このような状況の発生に、皆さんが一縷の望みをかける事は自由です。ただし、私といたしましても、そのような事態は避けるべく周到に手を打った上で、ここにいるつもりでございます。

 その他、今までの説明に無いようなアクシデントが発生した場合、それぞれ個別に判断して対応を行います。その際は、可能な限り皆さんに事態を説明し、ご理解いただいた上で行動に移すよう努めて参りたいと思います。

 次は、復讐が終わった後の事についてお話いたします。まず、冥菜ちゃんについてです。冥菜ちゃんは「選び取り」が終わった後、私の協力者の手により孤児院、今は児童養護施設と言うらしいですが、に別の名前でお引渡しいたします。今冥菜ちゃんは一歳ですので、恐らく物心はついていないと思います。万が一、この「選び取り」を将来思い出されても、先にお話した通り別名でお引渡しいたしますので、ここで起きたことまで辿りつく事は、おそらくないでしょう。また、復讐を行う私といたしましても、遠野家への復讐は希望しても、恐らくは嫁いで他家の方になられるであろう冥菜ちゃんをも、手にかけようとは考えておりません。むしろ、このような復讐の渦に巻き込まれる事なく、幸せな人生を歩んでいただく事を心から切に望んでおります。なお、祖父にも父にも私にも兄弟等はおりませんし、祖父と父はすでに鬼籍に入っております。私には子供もおりません。城山の人間は、おそらく私で最後でしょう。即ち、冥菜ちゃんへ復讐を考える者は、私が冥菜ちゃんを除外した時点でこの世にはもう居ないと思われます。ご安心くださいますようお願いいたします。

 次に、復讐を終えたあとの皆さんのなきがらについてお話いたします。皆さんへの復讐を終えた後、皆さんの遺体は私達の手で丁重に荼毘に付させていただきます。遺骨については大変申し訳ありませんが、海への散骨という形で葬らせていただきます。復讐を終えれば、遠野家の人間は絶えるため、墓を管理する者も居なくなります。誰も来ない墓に葬られるよりは、この方が良いのではと考えました。
 特定の宗教、宗派に対応した埋葬を希望される方も居るかもしれません。しかし、この件に関しては対応が非常に難しいため、ご要望に沿うことは難しいです。何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

 余談ではございますが、私自身の事にも触れる時間を少々頂戴したいと思います。皆さんへの復讐が終わり、冥菜ちゃんのことなど諸々の処理が済みましたら、私も皆さんの後を追おうと考えております。方法はまだ決めておりませんが、そうですね……。私も海へ飛び込んで、溺れてサメの餌にでもなるのが、最も手っ取り早いでしょうか。
 今、罪滅ぼしのためか、というご質問を優一さんからいただきました。それも無くはありません。
しかし、私がそのような死を遂げる事で、すでにあの世にいるであろう皆さんの溜飲が下がるなどとは微塵も思っておりません。自殺の最も大きい理由は、記憶の消去です。
 例えば、私が警察に捕まった場合、当然尋問等が行われるわけですが、そこで今回の復讐劇の真相や協力者の情報などを漏らすわけにはいきません。私としては、あくまでこの復讐は、私と皆さんの計四人だけが全貌を知りうるものとして終わらせねばと思っております。そのためには全てが終わり次第、私の記憶も早急に消去する必要があるものと考えております。


作品名:選び取り 作家名:六色塔