赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55
清子はたまの愚痴を完全に無視している。
あるきはじめたときから、恭子との会話に夢中になっている。
林道を進んでいくと、小さなせせらぎに出る。
せせらぎに架かった小橋を越えると、登山道を示す大きな案内看板が
2人の行く手に大きくそびえる。
「清子。ここからが飯豊山の、本格的な登山道だ。
覚悟はいいかい。臆病風に吹かれて引き返すのなら、今のうちだよ」
「とんでもありません。
期待で胸が膨らみ、ワクワク高鳴っています。
お天気は最高です。たまも一緒です。何一つ心配する要素はありません。
あ・・・・頼りになる恭子お姉さんと一緒です。
私は何ひとつ心配などはしていません」
「なんだかなぁ。とってつけたようなお世辞に聞こえたぞ・・・まぁいいか。
ほら、最初のマイルストーンが見えてきた。
ここから少し難所に変っていくよ」
「マイルストーン?。なんですか、それ?」
「道の途中におかれた目印、道標のことだ。
マイルストーンは物事の進捗を管理するため、途中で設ける
節目のことを言う。
到達点に向かうための、通過点の意味が有る。
道路に置かれている里程標識なんかも、同じ役割を果たしている」
「たいへんだぁ、お姉ちゃん。マイルストーンに下15里と書いてあります!。
1里というのは、4キロでしょ。
そうすると次のマイルストーンまでの距離は、ざっと60キロになります。
いきなり、60キロもあるくのですか!」
「あはは。これから始まる3つの急坂を、それぞれ15里と呼んでいるんだ。
せせらぎの先。600mの場所からはじまる最初の登りを、下15里。
そこからさらに500m登った先に、中15里が有る。
さらに600m登ると、最後の上15里がでてくる。
この急な上り坂を、1里が15里に相当するほど苦しいという意味から、
そういう名前がつけられたのさ」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55 作家名:落合順平