赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55
うふふと笑った清子が、『よっこらしょ』とリュックサックを肩にかける。
「あら・・・」見かけに反し軽いことに、清子が驚ろきの表情を浮かべる。
「別に、筋肉トレーニングに行くわけじゃないんだ、清子。
最初から重いと感じるリュックでは、長時間、担げるはずがないだろう。
軽く感じるのは、中身がバランスよく詰められている証拠さ。
市さんは、登山経験が豊富な人だ。
そうか。市さんはこのあたりで産まれたんだ。
ということは子供の頃から、何度も、飯豊山に登山しているはずです。
そうなると、リュックの中に何を詰め込んだのか、なんだか、
楽しみになってきましたねぇ。ふふふ」
心配そうな顔で見送っている小春を駐車場へ置いて、恭子と清子が、
登山口へ向かう最初の林道を歩きはじめる。
登山口はここから10分ほどの距離にある。
そこから、本格的な階段状の急な上りがはじまる。
『じゃあね。行ってきます!』2人が同時に振り返ったとき。
小春が何かを思い出し、あわてて清子を呼び止める。
「あっ、いけない。忘れていました。
市奴姐さんから、清子へ渡してくれとメモを預かってきました。
もしものことばかり考えて、つい、うっかりしておりました。
はい。市さんからの伝言です。
あ~あ、よかった。ちゃんと手渡すことができて。
このまま帰ってしまったら、市奴姉さんに、目いっぱい叱られてしまいます。
じゃあね2人とも今度こそ、本当に気をつけていくんですよ」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55 作家名:落合順平