赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55
「子猫に向かって、無茶を言わないの、清子。
猫の目が大きくなるのは、夜だけさ。
今は、三日月様より細くなっている状態だもの、景色なんか目に入るもんか。
山小屋で好物のかつお節でも食べされば、きっと機嫌も治るだろう。
もっとも山小屋に好物のかつお節が、有るかどうかが問題だけど、ねぇ」
さぁ行くよと帽子を直して、恭子が立ち上がる。
ガスのせいで、足場が滑りやすくなってきたから気をつけるんだよと
恭子が、清子を振り返る。
剣が峰は岩の塊が、不規則にゴロゴロと突出している。
三国避難小屋までの稜線を、こうした岩場が不規則に続いていく。
飯豊山は、遠くから撮影された写真のイメージから、
女性的な優しい山と、人々には思われている。
なだらかな稜線の山容。山肌を彩る数多くの高山植物の様子などから、
そんなイメージが多くの人に普及した。
全体的にほどよく整備された登山道を備えている。
しかし。所々にこうした荒々しい岩場や鎖場などがある。
かつて山岳信仰で賑わった山は、ときどきこうした男性らしさを、垣間見せる。
山の手ごわい洗礼を受けて尾根を歩くこと、30分。
2人の行く手に三国の避難小屋が、?せ尾根の遠くに見えてきた。
(55)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55 作家名:落合順平