赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (54)
夏まで残る雪渓
潅木の道をようやく抜ける。
地蔵山からやってきた道と合流すると、三国岳へむかう尾根を伝う道に出る。
このあたりから、所々、足元が崩れた痩せ尾根になっている。
霧がすこしづつ濃くなってくる。
滑らないよう注意しながら、恭子と清子が痩せた尾根の道をすすんでいく。
およそ30分。急峻な三国岳の上り口へ到着する。
「清子。ここから先が、今日一番の難所だよ。
剣が峰という岩場がある。鎖を頼りによじ登っていく険しいところだ。
でもね。雨で濡れていなければ、さほど難しい場所じゃない。
ほら。遠くにたくさんの雪渓が見えるだろう。
あれはね、夏の中頃まで残るんだ。
ここの岩場を越えると避難小屋がある。そこまで行けば一休みができる。
ガスがかかってきたけど、天候が崩れる心配はないだろう。
一休みしてから、岩場を登ろう。
それまでたまを懐から出して、休憩させてやるといい」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55 作家名:落合順平