赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55
「あのう。男の人に胸を揉まれると、大きくなるというのは
まったく嘘なのですか?」
「たまたまプロラクチン受容体の成長期と重なって、大きくなっただけだろう。
生理学的にはまったく何の根拠もないよ。
なんだい、お前。
女の胸は男の人に揉まれると、大きくなると思っているのかい?。
可愛いねぇ。そんなものは根拠のないガセネタだ。
エッチと胸の大きさに関係はまったくありません。あっはっは」
『さて、行こうか』恭子が前方の登山道を見上げる。
灌木林の中を進んでいくと、やがて地蔵山の山頂に向かう小道と、
地蔵山の麓を巻いて峰秀水を経由していく分かれ道に出る。
『山頂へ向かう道は少しばかり手強い。清子が居ることだし、今日は
こっちだな』
恭子がなだらかな道が続く巻き道へ進路を取る。
「清子。
プロラクチンの成分は含まれていないけど、この先に美味しいミネラルを
たっぷり含んだ峰秀水の湧水がある。
水筒を用意して、たっぷり汲んでいこう。
冷たい水で顔を洗ったら疲れきった身体が、いっぺんに元気を取り戻す」
「冷たい湧水があるのですか!。それ最高です!」
「周りを見てごらん。ブナの大木があちこちにそびえているだろう。
ブナの林は昔から、天然の水瓶と言われている。
豊かな水源地さ。
何も見えないけど私たちの足元を、ブナが溜めた地下水が脈々と
流れているんだ。
冷たい湧水は汗を流して登る人たちへの、山からの贈り物だ。
ほら。木の間からもう、その湧水群が見えてきた!」
(54)へつづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55 作家名:落合順平