もやもや病 6
55 報告はないもの
ある先生とお話しをした
私は、病気がわかったばかりの時には、何回も何回も電話をしてくる患者さんが、その後の報告をしてくれないことが多いと、愚痴にも思われるようなことをお話ししてしまった
先生はぽつりとお話しされた
長い時間を掛けてご相談に応じても、こちらが問い合わせをしない限りその後の報告がないことは通常のことです
先生というお立場では、例え相手が私でも、患者さんのことをあれこれ言うことは出来ないとは思うけれど・・・
難病と言われた驚きは充分わかっているのだ、同じ立場の私だから
不安な思いは1度の電話ではどうにもならずに、何度も掛けていただくこともあることも
時には、昼間はお母さんで夜はお父さんというようなこともある
でもその後の報告は、何故無かったのだろう
以前、患者家族にそんなことをお話ししたとき、あなたが、もう一度結果を教えて下さいと言わなかったからではないかと言われたりもして
私の問いかけがなかったからと言うことなのかと
この病院ならと聞いて行った病院が、もしかして聞いている話と違うことがあったのか、良かったのか良くなかったのか、そんなことも教えて欲しいとお話ししている
難病がわかって気が動転している患者の気持ちも分かって下さいと言うようなことを言われた、きっと落ち着いたらご連絡して下さるだろうと…
その通りだとわかっているつもりなのに
私も無理な注文を言っているつもりではないので・・・
先生のお話の中で、相談を受けてもその後の報告はこちらから聞かない限り無いのは通常のことです
と言う言葉は私にはとても寂しいことに思えた
病院の先生との関わり方は、色々な方がおられる
でも、患者として先生にお話を伺うとき、患者の権利もありますが、先生の心はどう思われるのだろうか
お話しはわかりましたが、これこれこういう事で、他の病院に行くことになりました、とか、今は手術はしたくないと思いますとか、そう言う報告があっても良いのではないかと思う
数少ない病気の患者、先生もその後のことが気にならないはずがないと
きっと患者さんは、先生がお忙しいからかえってご迷惑を掛けると連絡することを遠慮しているのかもしれない、でも、葉書の1枚でも、何か書くことは出来ないだろうか
私は何人かの先生にお会いしてきた
先生方は皆さんとても良い先生で
術式の違いはあっても、病気に対する取り組みは、一生懸命して下さった先生方
それでも相性があるのだろうか、この先生は良い感じがしなかったと言われる患者さんも居る
先生も、お忙しいとき、体調によっても良いお顔ばかり出来ないこともあるのかもしれない
患者側には、先生を頼りにしています、という好き好き光線を発することが出来るようになどと冗談交じりでお話ししてきたが、頼りにした先生に、体調の悪いときだけでなく、卒業、入学、新年、術後何年と、どんな時でも良いので、今がどのような状態で元気でいるかという報告が出来るような関係であったらと思う
ずいぶん前に、ある先生が、術後10年音信不通の患者さんに連絡を取っているというお話を聞いた
直接お電話を頂いたと喜んでいた患者さんが居た
手術の時に、助けていただいたという思いは、術後10年、何処で連絡が無くなってしまったのか、とても寂しいことのように思った
病気が、盲腸のような病気なら、こんな事を書いたりはしない
ある先生が、脳外科は、お年寄りが多い中で、子どもさんや若い方が患者さんで来院するとき、この若い人たちを何とか良くなるようにしてあげたいと強く思うものだとお話し頂いたことがあった
この病院に診ていただくとき、お礼はどうしたらいいですか?と聞いてこられる患者さんもたまにいる
でもそういう心配よりも、本当は、今どうしているかという言葉の方がどんなにか先生へのお礼になるのではないかと思う
学校の卒業のとき、就職の時、ご自分の主治医に、お陰様で無事に卒業できました、就職しましたとご報告できたらきっとお忙しいなか喜んで下さる先生方だと思うから・・・