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もやもや病 2

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16 大人は走らない

次男が倒れて病気がわかり
脳室内出血、脳梗塞、髄膜炎と3拍子揃って知能低下の元になりえると覚悟したが
3才まで低下したと思われたことも、時間がちゃんと取り戻してくれた

でも、これは違うという中の1つに、どこでも走ることがあった
急いでも居ないのに走るの
それは大人が何かあって走るのとは違って、楽しそうに踊るように走る

大きななりをして走るのはとても目立ち
あげくに足が弱くて転ぶから

小さい子どもの転びとは違うので、Gパンの膝が穴が開くほど転び
私は、いつもどこかに行くたび、走らないように言い続けた

何かの本を調べたとか、いうのではないけれど、私は確信をしていた
大人は走らないものと・・・
大人は走れば良いのにと思うようなときでも走らない
知能の低下と関係有るのかとついつい思ってしまう

誰かと一緒に歩いていて、私が後から行けば、私の顔を見て走ってくる
それは私にはとても奇異に見えた
急に走り始めれば、周りを見ないで走るから、車のあるなしに関係なく走るのではないかといつもいつも走り出さないことを言って歩いていた

頭の良い人は、走らないものだろうか、大人はやはり走らないものだろう

大人になって、ふと気がつくと、次男は今、走らなくなってきたような気がする
口うるさい私の言うことが浸透したのか、それとも大人になってきたのか

夫の母のお葬式の日、火葬場の市松模様の床を、けんぱあで飛んで歩いた嬉しそうな中学の制服を着た次男の行動に、周りは何を思ったのか…
そんな姿を、仕事人間の夫は自分の次男の病気から来る行動を初めて目の当たりにしたのだと思う

私の気持ちを知ってか知らずか、夫はその時ずっと次男のそばにいて、私は離れていることが出来た

ここで私はうるさく次男の行動を止めずにすんだことを、ああ、ヤレヤレと思っていた
次男はいとこのお兄ちゃんに遊んでもらえた通夜の延長で、火葬場でも楽しかったのだろう

夫は、お葬式が終わって私に言った
あの子はみんなと同じように泣くことが出来なかった、泣いてるみんなを見て泣かなければいけないものと思ったみたいで、泣こうとしたけれど、とうとう泣けなかった…と

その時中学1年生、それから学校時代を過ごして
数年前、やっと大人になれたような気がして本当に、走り出すことも、踊るように飛び跳ねることもなくなった

こんな事誰にも尋ねたこともないけれど・・・

作品名:もやもや病 2 作家名:とことん