ありがとう
数年が経った。
少年たちが伝えた『言葉』は村人たちに伝承され、村人たちと明確な意思を通わすことができるようになった。
少年たちが伝えた『文字』は優れた伝達手段として、村人たちに新しい概念を与えた。
美味しければ微笑む。
それを『美味しい』といい、『甘い』などと表現するようになり。
不味ければ眉根を寄せる。
それを『不味い』といい、『苦い』などと表現するようになった。
少年たちはそれを喜び、村人たちもそれに感謝した。
やがて少年たちはそれぞれに手当てを受けていた家を出て、彼らだけで家を持って、村人たちと共に暮らし始めた。
時には村人たちに言葉や文字を教え、見返りに彼らの農法や工作方法を教わり、いつものように、お互いに、微笑みながら。
この頃、気付いたことがある。
この周辺には特殊な鉱石が含まれる山がある。
どこかで少し換金できれば、旅費には十分事足りるほどに。
少年はそれを、気付いたときに少しずつ、手元に集めることにした。