Hugo Day
テーブルの上には、不格好なシフォンケーキと、コーヒーとプリンが交ざったような、得体の知れない飲み物が用意されていた。
(ケーキの見た目が……)
ヒューゴのテンションは下がりぎみだったが、顔だけは何とか笑って席に着いた。ピッパはなおも明るく勧めた。
「サラからレシピ聞いて作った、シフォンケーキだよ♪召し上がれ」
料理はそれほど得意でないパートナーの力作をじっと見ると、ヒューゴは大きく息をつき、フォークを持って恐る恐るシフォンケーキを少し口にした。
(見た目がああだから、味だってどうせ…んん!?)
「何だこの味…」
彼のこの発言を聞き、ピッパはまさに「ガーン」の状態になった。そして、ぼそぼそした声で言い始めた。
「そんな、私、頑張って作ったのに…」
子どもたちは、母親がこのあとどんなことになるか予想がついていた。部屋の隅で座り込んで泣くか、怒って暴れるかのどちらかだ。
しかし、ヒューゴはピッパを呼ぶと、彼女の目を見て、口を閉じたまま満面の笑みを浮かべて親指を立てた。形の悪いシフォンケーキは、彼の予想に反して美味だったのだ。感情豊かなピッパは心底うれしくなり、パートナーにバックハグして
「ありがとう」
と感謝の言葉を述べた。
彼はケーキを一口、二口食べると、飲み物の入ったグラスをじっと見た。その下のほうには茶色の四角形のものが幾つもミルクに浸かっており、その上にはカスタードに似たものが多めに盛られていた。ほんのりとコーヒーの香りを漂わせながら。フィオナとファビは、得意げにその飲み物を紹介した。
「これね〜、コーヒーゼリーと」
「カスタードのアイスに」
「あっつあつのブラックコーヒーを掛けた」
双子はお互いを見つめてこくりとうなずくと、
「コーヒー&カスタードドリンクだよ〜♪」
と、息ぴったりにハモってドリンク名を言った。
「ほぉ、面白いもの作ったな、おまえたち」
「「そうでしょ〜?」」
彼らは、自分らの作ったメニューに自信があった。
「ところで、これはどうやって飲むんだ?」
「カスタードアイスをスプーンで混ぜて、溶かして飲んでね♪」
フィオナがぶりっ子調に答えた。
(本当に変わったドリンクだ…)
とにかく、ヒューゴは娘の言ったとおりにして一口飲んでみた。コーヒーとカスタードアイスは、彼の口の中で見事なコンビネーションを発揮した。彼のかわいい子どもたちのように。
「フィオナ、ファビ、ベリー・グッジョブ」
LBのツンツンキャラ担当のギタリストは、彼らを見て爽やかな笑みを見せると、両手の親指を立てた。
「「イエーイ!!」」
自信作を父に褒められて喜び合う双子の姿は、13歳といえどもまだまだ子どもである。