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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 46~49

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 「紫陽花が咲き始めると、会津に本格的な梅雨がやって来る。
 お前。ユリの花は好きかい?。
 会津にはオトメユリの群生地があるんだよ」

 「オトメユリ?。はじめて聞きます。
 山百合とは、また別の種類になるのですか?」

 「山百合の花は、大きめでほとんどが白。
 オトメユリは、別名を姫早百合(ひめさゆり)と呼ばれている、
 山間地に咲く特別なユリだ。
 宮城県の南部と、新潟、福島、山形県の3県が接している飯豊連峰の
 吾妻山、守門岳周辺に群生する貴重な花だ。
 花は薄いピンク色。ヤマユリのような斑点はない。
 花の香りは、甘くてとても濃厚だ」

 「群生地があるのですか。壮観でしょうねぇ・・・」

 「見たいかいお前?。じゃ、今度のお休みに見に行こう。
 ただし本格的な山歩きになる。浴衣じゃ無理だ。
 持っているかい、お前。山歩きができるような洋服を」

 「そうなると、登山用の靴も必要になりますねぇ。
 大丈夫です。お母さんからもしもの時にと、お金を預かっています」

 「馬鹿だねぇ。そんなもんにお金を使ってどうすんの。
 足のサイズはいくつだい?。あたしのが履けそうなら、貸してあげる」

 「9文半か、 9文7分です」

 「尺貫法かい。それじぁ、あたしの方が分かんないよ。
 前に教わったような気もするけど、センチに直すとサイズはいくつだい?」
 
 「9文半は、22.5Cm。9文7分は、23Cmです」

 「ふぅ~ん。23センチなら大丈夫だ。
 山登りの装備も必要になるな。でも大丈夫。全部貸してあげるから。
 じゃ行こうか。オトメユリが咲いている飯豊山へ」


 飯豊山(いいでさん)は、飯豊山地にそびえる標高2,105 mの山。
地元では飯豊本山と呼ばれている。
磐梯朝日国立公園の中に位置し、高山植物の群生地をたくさん持っている。
日本百名山のひとつに数えられている。

 最高峰は、標高2,128 mの大日岳。
飯豊山は山形県の小国町と、新潟県の阿賀町の県境に位置している。
福島県側から山頂を経てさらに御西岳へ至る細い登山道が、
福島県喜多方市の所有になっている。

 山頂も、喜多方市。
明治の廃藩置県のとき、飯豊山周辺は新潟県に編入された。
しかしこの時、飯豊山を神社宮とする福島県から、猛烈な反対運動が発生した。
参道にあたる登山道と山頂を、福島県に編入し直すことで、騒動が決着した。

 こうした経緯があるため、飯豊山は特異な登山道を持っている。
福島県の地図をひろげると、そのことがよくわかる。
喜多方市の北部から飯豊山にむかって、髪の毛のような県境が
にょろにょろと新潟県の中を伸びていく。

(49)へ、つづく