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武藤ゆたか
武藤ゆたか
novelistID. 63991
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モニのフクス

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ホノニがいった。
白い皿に盛られた料理は、おいしかった。
一通り食べたあと丸いテーブルの皿は片付けられ、ペリエ
が残った。
「みんなこれからも逢おうよ」
「そうだね、気が合いそう」イザナが言う。
「お土産も買ったしね」
「うん」
「じゃあ、アプリのライン交換しようよ」
スサノが言う。
「そうしよう!!」
みんな嬉しようだ。ぼくは特にイザナとの交換が
したかった。
みんなで見せあい、無事ラインの交換はできた。
「アプリは便利だね。絵文字も使えるんだよ」
ハナが言った。
「これで、交換終わり!」
ぼくは、こっそりイザナのラインにハートマークをつけて、
忘れないようにした。こっそり。こっそり。こっそり。
「もうすぐ、貧困も格差も終わるよ。ピケティという人が
言ってた、なんでも抜け道の国に資産税が全世界に公平にかかるらしい」
「若い人も、高齢者の人も手厚く福祉が充実して、国家が護るんだって」
ぼくはそう言うと、<ペリエ>をグビッと飲んだ。
「アメリカという国と、韓国という国も、福祉が充実するんだって」
「ふーん」アマテは聞き耳立てていた。みんな聞いている。
「じゃあ、何千年も続いた重労働も終わるんだ。動物工場みたいな」
「うん、そうらしい楽園だからね」
「お金の増殖やドル紙幣も変わるってさ、ピラミッドが終わるとか
なんとか」さらに、ぼくは言う。
「人工知能とロボットは人間に反乱しないってさ、そういう思考ができない
機械になるって」
「旧暦になるって。暦が変わるとか」
ぼくは<ペリエ>を飲んだ。みんなもゴクゴク飲んだ。
「ツクヨくんておもしろいね。なんか普通の子じゃないっぽい」
そう言うと、イザナはじっとまっすぐ、ツクヨを観る。
ぼくは、照れて下を向いた。なんかかわいい。この娘。
胸がキュッとしている。照れる。
「行こう」そう言うと、ぼくらは席を立った。
会計は「十五〇〇円です」お金をはらい店を出た。
不気味な重苦しい雲が空を覆っていた。雨が降りそうだ。
「まあ、なんとかなるでしょ」スサノはつぶやいた。
僕たちは、渋谷の街を散策しながら最後にロフトに
寄った。無印良品もある。
「ここ知ってる椅子や文房具と雑貨があるんだよね」
ハナが言う。
見学して、ぼくらは一通りみたあと、エスカレーターで
二階におりウインドウショッピングをした。愉しい。
 「私、これ買う」
 イザナは、スカルのシールと星のシールを買って、
外に出た。よく見ると店の角に小さな地蔵がある。
 ぼくはそっとさわって五円玉を置いた。イザナは八円を置いていた。
 モヤイ像の前まで来るとスサノが、
「今日は楽しかったね、みんな解散!ラインで交換して、
連絡取り合おう!!」
「はーい」みんなそれぞれ帰宅していった。影が黒い影を落とすかのように。
闇が近づいている。毒蛇のような。ヌルヌルと。

 わたしは、家についた。ともだちがクラスでできた。
「みんなで、渋谷、楽しかったな。また逢いたいな」
そう呟いた。
「あの男の子、ツクヨって言ったっけ。きになるなぁ、なんか個性的だった」
そう思うと、子宮がキュッギュッと鳴って、胸騒ぎがした。
「イザナーごはんよーっ」
親と一緒にテレビを観る。
『大統領選挙は、候補者が、酷い女性蔑視やセクハラの
言葉や壁をつくるなどと言っています。なんて候補でしょうか』
『人々は、スマートフォンを観ながら、考えているようです。
なんでもわかるヒントを得られる道具です。飛ぶように売れています』
「また、シリアのアレッポで、自爆テロです。首が転がり、
足がもげ爆発で九一九人が死にました、悲惨な戦場です」
「怖いわね、あいかわらず」
「そうね、うんざり」
私は戦争なんてなくなればいいと思っていた。
「お風呂わいたわよー」
「はーい」
 服を脱いで裸になり風呂に浸かる。
なんか胸がすこしだけ大きくなった。乳首も立っている。
「大人の女性かぁ。少し近づいたかな」
 あのツクヨっていう男の子の顔を思い出しながら、
裸で、湯船に浸かった。
遠くで、イナビカリが、唸るように聞こえる。怖くなり風呂に潜った。
ザブン。ザブン。ザブン。

 クラスにぼくは出た。つまらない授業を教科書に落書きしながら
ぼーっと空を眺めていた。
一筋の飛行機雲が右に流れていく。
こんどは、いつあの娘に逢えるだろう。
そんなことを想いながら教科書に相合傘を書いていた。
もちろんツクヨとイザナの名を書いて。
 休み時間にスサノがラインを見せた。
「ツクヨ、今晩、一緒にサイゼリアでもどうか?」って。
「うーーん、あんまり乗り気じゃないなぁ」
「いこうよ、ツクヨ、おれ行きたい」
アマテがいう。
「わかったよ。彼女くるの?、イザナっていったっけ」
「もち!」
スサノは嬉しそうだ。
「じゃあ、行くって返事しとくな。時間はいつにする?」
「早く帰れるし、六時十九分がいいんじゃないか?」
「よし、送っとく」そう言うとスサノはラインに打ち込んだ。
簡単に。そして死の香りとともに。

 わたしは、なんだか憂鬱だった。あの男の子ーツクヨの
のことが気になっていた。運命という物があるなら何か
線が繋がっている、きが、きがするのだ。でも自分からは、
勇気がなくて話しかけれない。じっとスマートフォンの、
ツクヨの写真を見ていた。
ハンサムでもないなぁ。でもなにか違うんだよなぁ。
空を眺めていると一筋の飛行機雲が右に流れていった。
イワが、スタスタと、やってきた。
「ねえ、あいつらに、食事行こうって送らない?」
「うん、食事でも誘おうよ」とホノニが言う。
「じゃあ、あいつらに送るね」
イワはそう言うと、<ポン>とラインのセンドボタンを押した。
<今日、食事でも、サイゼリアでどうですか?>
「返事くるかなぁ?」わたしは自信がなかった。
ただあの男の子ーツクヨには逢いたかった。ただなんとなく。
<ポン>すぐ返信がきた。
<今夜、みんなでサイゼリア行こう。集合時間は六時十九分ね>
「やだーー。あいつらはやいね」
「わたしらに、ほれたかな?ふふふっ」
イワがニヤける。
「オトコってスケベだからね。怖いよね。でもあいつらは紳士
だよ」とわたしは言った。
「いざとなったら、金玉に針刺せばいいのよ。オトコなんて」とイワは言う。
「そうだね、当たってるっ」とわたしは言ってみんな爆笑した。

 夜が来た。街は帰宅途中の学生や、中学生小学生、
主婦おばあちゃんなどで賑わっていた。
だが暗闇が覆っていた。まるで死神のように。
暗く、苦痛を招くような。イタイ。

「やあ」
アマテが最初にきた。ぼくは返事を返した。
スサノもきた。
「女どもは来るかな?」
「ごめーん、間に合った?」
ホノニが来た。
「私たち、楽しみにきたのよー」イワが言う。
「どうも」イザナが来た。
 ぼくはチラチラとイザナを見ていた。かわいい。
なんてかわいいんだろう。なんか心がウキウキした。
ぼくらは、サイゼリアの階段を登り、店員さんにテーブルに
案内させてもらった。
 壁には、イエスの最後の晩餐の絵と、天使の絵それと貝の上に乗ったビーナスの絵が
大きく飾ってある。天井には天界の神々の絵が地上を見守り話している絵が貼ってあった。
作品名:モニのフクス 作家名:武藤ゆたか