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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45

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 小春が昔を思いだす。
思わず、感慨深そうに目を細めたその瞬間。
小春の油断を見透かしたように、玄関のチャイムが鳴りはじめた。
『来た。10代目の恭子さんだ!』
『え?。』戸惑う小春を尻目に、清子が軽い足取りで玄関へ飛んでいく。

 (え?。な、何なの。何が起こったというのさ、一体。
 聞いてません。あの子がいきなり、ウチの玄関に登場するなんて。
 あたしはまだ、心の準備が、まったくととのっていないというのに・・・)

 「小春お姐さん。
 少し早いようですが、恭子さんがもう、玄関へ到着してしまいました。
 ドアを、開けても構いませんか?」

 「どこから電話をかけてきたのかしら、お嬢さんは?」

 「すぐ下の、公衆電話からです。
 あ、その事を言うのを忘れていました、あたしったら。
 ごめんなさい。でも、どうしましょう。いつまでも待たせたら可哀想です。
 開けてもいいでしょうか、このドアを」

 「断る理由は、とくに見当たりません・・・・
 いいですよ、開けても。わたしもお顔を見るのが楽しみですから・・・」


 万事休すと、小春が心の中で白旗をあげる。
『許可をいただきました!!』清子がにこりと笑う。
すぐさま玄関の鍵を開ける。

 カチャリとカギが外れて、ドアが開く。
風呂敷包みを抱えた恭子がそこに立っている。
なぜか緊張した、こわばった顔をしている。
整った恭子の顔の中に、小春は、幼い時に見かけた面影をまったく
見つけ出すことができないでいる。

 (この子が、恭子ちゃん・・・
 一度だけお見かけしたのは、たしか、10年前。
 この子が、6つか7つのときでした。
 色白で、利口そうな子という印象は有りますが、お顔は覚えておりません。
 そりゃそうだ。この子は、本妻が産んだ大切な跡取り娘だもの)

 とつぜんお邪魔してすみませんと恭子が、ぺこりと頭をさげる。
あわてて小春も頭をさげる。

 (どこからどう見ても、今はもう、一人前の素敵なお嬢さまだ。
 清子とお嬢さんが結びつくなんて、あたしもうっかりしておりました。
 油断しすぎましたねぇ。
 これを迂闊と言わず、なんというのでしょう。
 思いがけないことになってしまいました。
 ああ・・・なんだか、頭がクラクラしてまいりました。
 困りました。こんな日がやって来るとは、夢にも思っていなかったもの)


 (44)へ、つづく