赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (44)
たまの暴走
「大和屋酒造の弥右衛門の長女、恭子といいます」
風呂敷包みを差し出しながら、恭子が最高潮の緊張を見せている。
「くれぐれも失礼がないように。と、何度も念を押されました。
これは、わしからだと言って渡してくれ。
そう言われ、こちらのものを預かってまいりました」
風呂敷から出来てきたのは、今年仕込んだ最上級のカスモチ原酒の特選品。
豊潤で濃厚な味が、カスモチ原酒の特徴。
こうじを多目に使っているからだ。
大和屋酒造は厳格なまでに製法を守りながら、伝統の酒を受け継いできた。
酒蔵の10代目を継ぐ恭子にとって、カスモチ原酒の特選品が持つ意味は、
嫌というほど理解している。
「ありがとうございます。
お父上様に、よろしくお礼を申しあげてください。
先日は、ウチの清子が、喜多方で大変にお世話になりました。
あらためて、感謝とお礼を申し上げます」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45 作家名:落合順平