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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45

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 「清子は湯西川温泉で芸妓修行を始めたばかりの、15歳。
 朝ラーメンを食べに来ただけなのに、おばあちゃんが余計なことを
 言うんだもの。
 清子どころか、あたしまで手伝うハメになっちゃった。
 東山温泉の売れっ子芸妓、小春さんの妹芸妓に当たるそうです。
 会津の市さんと一緒に、ウチの酒蔵へ見学にきたのよ」

 「東山の小春に、会津の市さんといえば、トップクラスの
 芸妓の2人じゃねぇか。
 驚いたねぇ。どうりでサラブレッドの雰囲気が漂っているはずだ」

 「すみませんね。どうせ私は、喜多方生まれの駄馬です。
 ふん。大嫌いです。15歳の小娘にクラクラしているおじさまなんて!」
 
 「本気で怒るなよ、10代目。
 お前さんも充分にカワイイ。しかしあの子は、別格だという意味だ。
 お前さんのところの酒蔵は、いい酒を作るための、いい水に恵まれている。
 あの子のところには、いい女を作るための環境が、すべて整っている。
 ただそれだけの差だ。
 しかし、いい娘だねぇ。働いている姿に華が有る。
 接客業に向いている子だな。天性の、お座敷向きだな」

 おっ、なんだこいつは・・・常連客が、足元を見つめる。
『なれなれしい小猫だな。俺は猫が大嫌いだ』
足元にじゃれついてくる子猫を、足で払いのけようと常連客が身構える。
それを見た恭子が、慌ててたまを抱き上げる。


 「足で蹴るなんて、バチ当たりなことをしないで。おじさま。
 こう見えてもこの子は、れっきとした、三毛猫のオスなのよ。
 清子が看板娘なら、こっちの三毛は、商売繁盛の護り神なんだから!」

 「なっ、なんだって。野良猫じゃねぇのか。こいつは三毛猫のオスか!」
三毛猫のオスと聞いて、常連客の目が丸くなる。
『驚いたなぁ。いきなりダブルで、福の神の到来かよ。どうなってんだ。
今日はいったい・・・』常連客の驚きが頂点に達する。
そんな騒動をまったく知らず、清子は水を得た魚のように笑顔をふりまきながら、
ごったがえす店内と厨房を、忙しく往復している。


 (42)へ、つづく