赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (45)
野口英世記念館
猪苗代湖の東海岸に、観光客があつまる施設がいくつもある。
猪苗代町出身の細菌学者、野口英世の記念館もそのひとつ。
生家をはじめ、遺品や資料などが展示されている。
乳児期。火傷を負った囲炉裏も、見学することができる。
門出に『我志をなさねば二度とこの地を踏まず』と決意を刻んだ床柱も、
そのまま残されている。
ちかくに、野口英世の遺髪を納めた「誕生地の碑」がある。
野口が遺した格言を刻んだ「忍耐の碑」もあり、母親のシカが篤く信仰していた
観音堂も昔の姿のまま保存されている。
「ねぇ、清子。お前、なんで芸者になろうと決めたの?」
ソフトクリームを買ってきた恭子が、少し大き目と思われる方を、
『はいっ』と清子に差し出す。
『世界のガラス館でも見に行こうか』そのまま歩き始める。
「なんでだろう。
あたし。頭もあまり良くないし、勉強も好きじゃない。
中学2年生の時。生まれて初めて、ほんものの芸者さんを見たの。
そのときの、着物姿に衝撃を受けました。
その時の芸者さんが、今の春奴お母さんと、小春姉さん達です。
お粉(しろい)の匂いと、艶やかな衣装に、酔っちゃったせいかしら」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45 作家名:落合順平