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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 41~45

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 小春も突然すぎる対面に、自分の気持ちを開放しきれていない。
つとめて冷静を装っている。しかし。心は穏やかでない。
それはそうだ。目の前にいる女の子は、いまも想いを寄せている
愛する男の、最愛の娘だ。

 『立ち話もなんですから、どうぞ、上がってくださいな』
玄関に立ち尽くしている恭子へ、ぎこちなく入室をすすめる。
おかしな空気が2人のあいだに漂っていることに、清子も気がつく。

 (不思議な気配が2人の間にただよっていますねぇ。、
 あ・・・小春姐さんが想いを寄せているお相手は、恭子さんのおとうさん、
 喜多方の小原庄助さんです!)

 いわくの有るの2人がいきなり対峙すれば、空気が重くなるのは
あたりまえのこと。
この場を和らげるための方法を、清子が必死になって考え始める。
しかし。いくら考えても、良いアイデアは浮かんでこない。

(駄目だ。人生経験の乏し過ぎるわたしには、手に負えません。
 まいりました完全に・・・この場の空気を和ませるために、こんなとき
 誰か、機転の利く人がやって来てくれないかしら)

 しかし。いまの時間、小春の部屋へやってくるような救いの神は
思い当たらない。
清子が途方に暮れた時。何を血迷ったのか、『オイラに任せろ!』と
言わんばかりに、3人の足元をたまが駆け抜けていく。
凄い勢いを保ったままのたまが、玄関から飛び出していく。

 外へ出た瞬間。廊下で足がすべる。
だがなんとかこらえ、その場で態勢を立て直す。
じたばたと廊下で蹈鞴(たたら)を踏んだ後、ふたたび速度を上げて
階段へ向かう。

 (よし。ここからが見せ場だ。
 階段に落ちると見せかけて、急ブレーキをかける。
 ただ止まって見せるだけじゃないぜ。
 空中で1回転半回って、格好良く、着地を決めてみせるぜ!)

 階段の1mほど手前で、たまがダッシュからの急停止をこころみる。
しかし不幸なことに、勢いがついたたまの足元は、どうにも止まる気配がない。
必死に爪を立てて、もがいてみる。
だが廊下は昨日、クリーニング業者が、ピカピカに磨いたばかりだ。
いくらたまがもがこうが、ブレーキはかからない。

 『くそ!。畜生。磨くのにも限度があるだろう。
 クリーニング業者のバカやつらめ。
 このままじゃおいらは、階段から下の踊り場まで真っ逆さまに墜落しちまう。
 神も仏もいないのか。。誰か、ピンチのオイラを停めてくれ~』