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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅸ

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「情報職は基本的には『一人一担当』のやり方だが、それでも、一人で仕事が完結するわけじゃない。直轄チームにいる君なら分かると思うが、一つの案件を複数で処理するケースは多いし、部をまたがって対応する場合もある」
「……そうですね」
「そもそも私たちの仕事は、他の部署や部外のユーザーの需要に応えられてこそ意義がある。自分の仕事を真摯にやって、幾ばくかでも関係者の役に立ち、周囲の信頼を得るのが、何より先だ。そういうのが積み上がって、初めて評価されるんだ。キャリアアップに有利だの不利だの、誰より上だの下だのと、そういうことにばかり気を取られていては、いい結果は出ない」
 手厳しい言葉に、美紗は身を固くした。八嶋香織の思惑を完全に見透かしている日垣は、今、目の前に座る女の心の内に、気付いてはいないのだろうか。

 本当は気付いていて、気付かないフリをしているの?

 ずっと忘れていたことを、思い出す。日垣貴仁は、嘘と偽りの世界を長く経験している。そんな男が顔色一つ変えずに「気付かぬフリ」をすることなど、造作もないはずだ。

 気付けば、拒絶しなければならないから、
 気付かないフリをしてるの?
 
 用心深く生きることに長けた男の心を知ることは、とてもできない……。