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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅸ

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「いえ、そちらは全く。最高級のトパーズはシェリー酒と同じ色だと聞いたことがあって、それで、アルコールつながりでちょっと調べたことがあるんです。人の手を加えて石の色を自在に変えられる、というところも、なんだかカクテルに似ていて面白いなと思いまして」
「カクテルの色は思い通りに出せるものなんですか?」
「では、鈴置さんの石と同じ色をしたカクテルを、作ってみましょうか。それなら飲めるでしょう」
 美紗の返事を待たずに立ち上がった征は、ベテランの風格を漂わせながら、ほぼ席の埋まったカウンターのほうへと歩いていった。
 テーブル席に一人残された美紗は、窓ガラスに映る自分の姿を見た。手を首の後ろに回し、アジャスターを調整してネックレスのチェーンを短くする。常に一番上まできっちり留めていたブラウスのボタンをひとつ開けると、ピンクとオレンジの二色に輝く誕生石が、襟元からちらりと見える位置に収まった。

 このトパーズは、私と同じ

 人の目を避けるようにブラウスの下に隠れていた石は、あの人を好きになった日から今日までの自分の姿だった。それで構わないと思ってきた。
 でも、この石は、本当は、日の光の中で輝きたかったのかもしれない。もしかしたら自分自身も、あの人と一緒に日の当たるところを歩きたいと、心の片隅でほんの少しだけ、望んでいたのかもしれない……。


「お待たせいたしました」
 いつの間にかテーブルのすぐ脇に立っていた征は、美紗の目の前にロックグラスを静かに置いた。大きな氷を抱く液体は、美紗の胸元で光る小さな石の色を写し取ったかのように、ピンク色にもオレンジ色にも見える柔らかな色合いを見せていた。
「……本当に同じ、色ですね。どうやってこの色を出すんですか?」
「色付けには赤いシロップを使っています。ざくろの果汁から作られたもので、原液は赤ワインのような色なんですが、これをグレープフルーツジュースと混ぜて、このような色合いにしているんですよ」
「でも、この石と同じ色になる分だけ入れるのは、どうやって……?」