⑥残念王子と闇のマル
その艶やかな…背筋に甘い痺れを走らせるエメラルドグリーンの瞳を見つめ返しながら…私は、カレンの後頭部に手を添える。
「…お誕生日、おめでとうございます。」
ようやく言えた言葉と、先程はできなかった笑顔をカレンに向けた。
カレンはぎゅっと眉根を寄せると、泣きそうな表情になる。
「愛してます…カレン。出会えて、本当に幸せでした。」
「…なんで過去形」
カレンの言葉を遮るように、私はカレンの後頭部を引き寄せ、深い口づけをした。
「マル、赤ちゃん…できたら帰ってくる?」
突然の言葉に、身体中から血の気がひく。
「赤ちゃん…できてほし」
カレンが途中で言葉を切った。
そして私から目を逸らす。
「…泣かないでよ…。」
私はカレンの首に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「マル、ほんとはもう帰ってこないつもりな」
その言葉を、再び口づけで遮る。
「ねぇ、マル。帰ってくるって約束」
カレンの言葉を何度も口づけで遮ると、カレンも諦めたのか、もう何も言わなくなった。
そのかわり、まるで自分自身を私に焼き付けるかのように…いや、植え付けるかのように…今までで一番執拗に私が敏感に反応するところを攻め続け、熱を放ち、私を快楽の絶頂へと導いた。
混濁する意識の遠くで、カレンの囁きが聞こえる。
「戻ってきてくれたら、これは返すよ。」
その言葉と同時に、耳たぶを触られた感覚がした。
けれどもう指一本動かせないほど意識の奥底へ沈んでしまっていた私には、目が覚めるまでそれがなんなのかわからなかった。
作品名:⑥残念王子と闇のマル 作家名:しずか