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⑤残念王子と闇のマル

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二人でひとつ


「もう傷が開く心配、ないですよ。」

紗那が肩の傷に絆創膏を貼りながら、笑顔を向ける。

「抗生剤も、今手元にあるぶんで終了です。」

馨瑠から塗り薬だけ受け取ったカレンが、満面の笑顔でこちらをふり返った。

私たちが微笑み合う様子を見ていた紗那が、悪い笑顔を浮かべる。

「なるべくぅ優しくお願いしますねぇ、カレン様♡」

「?」

意味がわからない私たちが首を傾げると、馨瑠が冷ややかに言い放った。

「声も抑え気味で、お願いしますよ。」

その言葉に、紗那が悪戯な笑顔で私たちを見つめる。

「ガーゼ外れたらぁ、するんでしょ~?」

「!!」

(聞いてたの!?)

とたんに顔が真っ赤になった私の横で、カレンが声を立てて笑った。

「も~、覗き見なんて悪趣味ですよ♡」

そんなカレンに、紗那と馨瑠が不敵な笑顔で対抗する。

「ここは忍の国ですもの♡」

(あああ…もう嫌だ…。)

今まで自分がしてきたことが、どれほど相手にとって嫌なことだったか…ようやくわかった私は、数々の人々に土下座して謝りたい気持ちになった。

紗那と馨瑠が部屋から出て行き、扉が閉まる。

私はカレンにローズヒップティーを淹れながら、本日の予定を訊ねた。

「ん~、今日は午後からソラ様の使役動物を見せてもらう予定なんだ。訓練とか調教の仕方とか学ぼうかなって。」

「それなら、私も一緒に行きます。」

星一族の敷地なら、私はカレンの傍にいることができる。

他国では婚約者として堂々と隣に立てても、自国では王女にも関わらず、私は存在を誰にも知られていない、誰にも知られてはならないので、なかなか一緒に過ごすことができない。

久しぶりに日中も傍にいれることが、嬉しかった。

「そんなに喜んでくれると、嬉しいな♡」

思わず頬が緩んでしまっていた私の顔を覗き込みながら、カレンが妖艶に微笑む。

「そんな可愛い顔されると、今すぐ食べちゃいたくなるよ♡」

「!」

熱のこもった瞳に見つめられ、私の鼓動は一気に高まった。

「…。」

カレンから目が離せない私をジッと見つめていたカレンが、ゆっくりと近付いてくる。

吐息がかかる距離まで顔が近付き、自然とお互いに目を閉じた。

その直後、柔らかく二人の唇が重なる。

啄むように、優しく柔らかく何度も重なりながら、カレンに抱きしめられた。

(体が、熱い。)

カレンの腕の中は熱く、合わさった胸から早い鼓動が伝わってくる。

その熱の心地よさに体から力が抜けた瞬間、カレンが私を横抱きにし、一気に口づけを深めた。

「カレン…。」

息継ぎの合間に名を呼ぶと、カレンは呼吸を乱して貪るように口づけを深める。

そしてそのまま寝室へ早足で向かい、私をベッドへ降ろした。

「マル…僕のものになってくれる?」

唇が離れ、至近距離で熱っぽく見つめられながら気持ちを確認された瞬間、背筋に甘い痺れが走る。

「はい、…喜んで。」

私はカレンの首に腕を回して引き寄せると、自ら唇を重ねた。

カレンはローズヒップの香りの熱い吐息を溢しながら、私の服に手をかける。

「優しく…できないかも…。」

その言葉通り、カレンにいつもの余裕はなく、野獣のように呼吸を荒くしながら、私と自らの服を剥ぎ取った。

「あっ…」

たまらずあげた嬌声に、カレンの体は更に熱くなり呼吸も乱れる。

私の全身を味わうように撫で、口づけ、舐めるカレンの愛撫に、私は今まで感じたことがない快感に襲われ、甘い声をあげながら身をよじった。

(これが、愛する人に抱かれる幸せ…。)

言葉にならない声をあげ、ただただカレンに求められる喜びに溺れ、身体中に溢れる快感と甘い痺れに正気を保てなくなる。

「…マル…愛してる…!」

熱い吐息まじりの囁きが鼓膜を震わせた瞬間、体の芯をカレンに貫かれた。

高くあげた嬌声に、カレンが熱い瞳で私の瞳を覗き込む。

「やっと…やっとマル、ひとつに…。」

こめかみから滴る汗を拭おうともせず、獲物を捕らえた獣のように私を見つめて荒い息を吐きながら口角をあげた。

「…カレンっ…!」

私がその汗を掌で拭いながら名を呼ぶと、カレンは私を見つめたまま激しく貫き始め、その律動による艶かしい音と激しく乱れるカレンの呼吸が私の嬌声に混じって部屋に響く。

その音に快感を助長され頭の芯が痺れてきた私は、意識を保とうとカレンの背中にしがみついた。

深く繋がったまま何度も貫かれる度に、子宮が突き上げられ、その初めての痛みに目尻に涙が滲む。

それでもカレンともっと深く繋がりたいと、カレンの腰に足を絡ませカレンの身体を捕らえた。

「あ…カレン…離れちゃ、いや…」

喘ぎながら紡いだ言葉に、カレンはふっと小さく笑う。

「離れるはず、ないだろ?」

荒い呼吸まじりの掠れたその声は、聞いたことのない低く艶やかな声で、それだけで私の体は甘く痺れた。

(父上の色術にかかったみたい…。)

快楽の波にふわふわと意識が飛んでいきそうになる私を、カレンは激しい律動を繰り返しながら荒い呼吸のまま強く抱きしめ、首筋に口づける。

「マル…も…いい?」

カレンが白い肌を紅潮させ、快楽に溺れ焦点の定まらなくなったエメラルドグリーンの瞳で私の気持ちを確かめるように覗きこんできた。

嬌声しかあげられない私が小さく頷くと、カレンは私の頬をそっと撫で、深く口づける。

すると、身体の奥で熱が大きく膨らんで熱くなる感覚がした。

カレンは素早く身を起こし、ベッドへ手をついて息を詰める。

「は…」

身体を強ばらせ小刻みにふるえながら、声を漏らすカレンが愛しくて幸せで、私はカレンの首にしがみついて嬌声まじりに名前を何度も呼んだ。

汗ばんだ背中から更に汗が吹き出し、カレンは一気に脱力する。

そのまま私をきつく抱きしめるとベッドに倒れ込み、首筋に顔を埋め荒い息を吐きながらそこに口づけてきた。

「…マル…愛してる…愛してるよ…。」

頭を優しく撫でられて、その大きな逞しい身体に抱きすくめられ、私はこれ以上ない幸福に満たされる。

「カレン…。」

名前を呼んだ瞬間、繋がっていたものがズルッと抜ける感覚がした。

「…ぁっ。」

小さな声をあげた私に、カレンは小さく微笑む。

お互いの呼吸が落ち着くまで、私たちは足を絡め離れてしまった隙間を埋めるように抱きしめ合った。

「ごめん…。」

突然謝られ、私は驚いてカレンを見上げる。

でも抱きしめられているので、カレンの喉仏しか見えない。

「…なんで謝るんですか?」

後悔しているのかと不安になると、カレンが私の耳を軽く食んで熱い吐息を吐いた。

「肩の傷…痛くない?」

絆創膏の上から口付けられ、それだけでカレンとひとつになった余韻が鮮明に残る身体の奥深くが甘く疼く。

「大丈夫です…。」

まだ快楽の熱にうかされ、痺れたままの身体には突き上げられた子宮以外に痛みを感じる場所はなかった。

「良かった…。」

カレンはホッとしたように目を瞑ると、私の頭を自らの胸に抱き込む。

「優しく…できなかったから…。」

乱れていた呼吸が、少しずつ落ち着いてきた。
作品名:⑤残念王子と闇のマル 作家名:しずか