俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第二章・第二話】
「お嬢様。何のことかわかりますが、わかりませんと申し上げて、自分の身を防御します。」
「防腐剤は渡しませんわ。誰が腐ろうともワタクシには無関係ですから、全然オカマいなしですわ。」
「かなりエロ病んでるな。」
「どこがですの。」
「全部だ。からだは純情可憐っぽいがな。」
「からだだけは大純潔キープですわ。」
「強がってるけど、あんた、本音で話す相手がいないんじゃないか。」
「そ、そんなことありませんわ。ワタクシは生徒会長で生徒たちの信頼も厚く、誰からも気軽に声をぶっかけされますわ。」
「お嬢様。その言葉使いにすでにムリが発生しています。」
「かなり動揺しているようだな。エロ用語を使う割には、実体験はなさげだし、自分の弱い心のシェルターにしてるんじゃないのかな。」
「ワタクシは強い女ですわ、特に夜に営業展開しますわ。」
「お嬢様。普通は営みと表現するところをデフォルメしたことは評価しますが、大した点数はあげられません。」
「別に、ポプラの評価などアテにしておりませんわ。映倫にかける方がマシですわ。」
「その様子だと、生徒会長の懐刀からも見放されつつあるな。」
「宇佐鬼さん。メイドとして、筒は持たせない主義です。」
「あんたも同類か?」
「お嬢様と類似品とは、失礼極まりない悪口雑言、誹謗中傷です。」
「ほら、生徒会長のただひとりの付き人もこうだぞ。四面楚歌っていうか、n次元楚歌って感じだな。」
「しかし、あなたもとことん毒舌ですわね。舌を入れたくなりますわ。」
「お嬢様。舌を抜きます、です。そこを間違えるのは元鬼族、地獄ウサミミの風上にも置けません。」
「ほらほら、ますますおかしくなってきたぞ。生徒会長のエロは仮初めの自分隠しだ。オレが、穴があくまで覗き倒してやる。」
「なんて破廉恥なことをおっしゃるのかしら。」
「別に変な意味で言ってるんじゃない。これがあんたの姿だよ。誰も隠してくれない裸の心。寒さに凍えているはずだが、凍え過ぎて感覚が麻痺しているのかもしれない。」
華莉奈は表情を曇らせた。汗が何筋ともなって流れ落ちており、心の動揺は隠せない。
「そこまでおっしゃるとは。あなたは人の心をギザギザ刃物で抉るのが趣味のドSなんですの。」
「ああ、そうだ。オレは黒塗りしたものを復元して白日の下に晒して、恥辱することがモットーなのさ。ポジティブだろ。」
「これは鬼畜モットーですわ。あなたはここまで堕落してしまったことを悲しく思いますわ。ここまで、酷いことを言われたことと、あなたの人格堕落が悲しいですわ。ううう。」
「ついに橋頭保の涙腺を崩壊させたな。」
「あんたなんか、犬に食われて、カラスにつままれて、金魚にフンでもかけられて地獄へ行けですわ。ワタクシも曲がってますが、あなたほどではないですわ。ワタクシの理解者のポプラもいますし、心の氷を解かせばいいのですから。」
「やっと五合目まで辿り着いたな。それが自分に素直になるということじゃないのかな。それでいいんじゃないか。」
「あなた、まさか、ワタクシがこんな気持ちになるように、過激なことを言ってたんですの?」
「いや、あれは本音さ。オレは自分にウソをつけないんでな。」
「そうですの。あなたのことをパンツの穴程度は理解しましたわ。」
「お嬢様。それはお嬢様的にかなり深く味わったことになります。」
「さあ、お前の翼を羽ばたいて、スカートめくってくれ。」
「ワタクシの真似するとは、百年早いですわ。でも宇佐鬼大悟さん。あなたの物言いには感心しましたわ。いいでしょう。あるクエストをクリアしたならばあなたの願いに応えることを考えないでもないですわ。逆にできなければそちらの幼女は地獄の『おもちゃテーマパーク』に飾られますわ。」
《幼女じゃない。高校生だ。まる、どうなってもいい。・・・とか言わない。だんまり。》
「その方がお前らしいな。当然、お前も助けるさ。オレにとって大事な仲間っていうことでは変わりがないからな。」
《ありがとう。でもまる、仲間以上の存在になってると思う、願う。だんまり。》
「ああ。仲間という存在の重さは測れないものだよな。うんうん。」
「宇佐鬼大悟さん。ちょっと説明が違ってるようですわね。まあいいですわ。クエストを早く始めてくださいな。女の子をマタせるのは、男の恥ですから。」
「お嬢様の発言の方が恥と見ました。」
「防腐剤がどうしてもほしいならば、ワタクシの言うことをよくお聞きなさい。地獄には鬼のようにコワい『カメ導師』というのがいるのです。」
「カメ導師だと?あんたたちはウサギっぽいし、それにカメって昔話のようだな。」
「あら、よくご存知で。カメ導師も元は鬼。進化の過程で、角が変化して甲羅になったのですわ。桃太郎騒擾よりも後の時代に、ウサミミ族とカメ族が争い、カメ族に負けたというのがウサミミ族のトラウマ。ウサミミ族は負けて制空権をカメに取られた、ゆえに空に海がいってしまったのです。」
「あの灼熱の空の海はそういう事情だったのか。」
「そういう言い伝えになってますわ。所詮伝説ですから真偽のほどは不明ですが。」
「作り話かもしれないのかよ!でも伝説っていうのは現在の住民のご都合主義の産物だからな。」
「伝説では、カメ族は戦利品として、ウサミミ族から宝物を奪ったことになっていますわ。それを取り返してほしいのですわ。」
「その宝物とはいったい?」
「ウサミミ族に伝わる秘伝書ですわ。ぽっ。」
いつもは尊大な華莉奈が乙女のように恥じらいを見せた。
「なんだかイヤな、てか、限りなくエロいことが容易に想像できるんだけど。」
「正解ですわ。それはいにしえの必殺技が描かれていて、現代にも通じるエロスの電動、いや殿堂と言われておりますの。きゃあああ!」
しゃべりながら、椅子から大きくのけぞる華莉奈。
「お嬢様。電動とエロスのコンボに動揺されるのはムリモありません。」
「し、失礼しました。ですから、空の海へ上って、カメ導師を倒して、秘伝書を持ち帰る。それがあなた方のクエストですわ。」
「そのカメ導師ってのはどんな相手だ。強いのか。」
「いかんせん、空にいて、降りても来ないので、具体的な様子はわかりません。ただ、ひどくエロいジジイだとのウワサはあります。大昔から空に住んでいるのですから、その評判は妥当ですわ。」
「うぐっ。それは厄介だな。エロジジイとなれば、ますます騙流を連れて行くわけには行かないな。ここに置いておくことが正解かな。」
《まる、一緒にいく。まる、いなければ宇佐鬼大悟、何の魔力も使えない。伝家の宝刀・魔境放眼、持ち腐れ。だんまり。》
「自分の刀という逸物を腐らせるとはもってのほかですわ!」
「そのツッコミは方向音痴だ!」
「ホー●ーオチ」
「お嬢様。それ以上は絶対禁止です!空耳のバッケンレコードです。」
「騙流の言いたいことはわかった。危険だが、そのエロジジイからはオレが守ってやる。」
《まる、うれしい。だんまり。》
「重たいぞ。」
「こ、こんな公衆の面前で大合体!これから組体操プレイするのかしら。たら~。」
すでにお姫様抱っこになっている騙流とふたりの姿を見て、滝のように涎を垂らす華莉奈。三人合わせて変質者集団としか見えない。
作品名:俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第二章・第二話】 作家名:木mori