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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第二章・第二話】

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「「縁起でもない言い方するんじゃない。」」
楡浬と桃羅がコンボして反論。
「でも精神的衝撃を受けることが地獄へのゲートを開くのよ。それは人間には見せられないルールなのよ。恥ずかしかったけど。騙流は打ち合わせ通りやってくれたわ。」
 楡浬が目を細めてポツリと独り言をこぼした。
 倒れている大悟を一瞥した桃羅は一枚の小さなメモを騙流に渡した。
その時、騙流と大悟を黒い雲のようなものが取り巻いた。そのままふたりの姿は消えた。回りの客は騒ぎもしないところから、騙流たちの姿は見えなかったらしい。

「ううう。頭いてえ。スゴい衝撃だった。・・・でも何の衝撃だったったけ?誰かに殴られでもしたのかな。でもたんこぶがあるわけでもないな。物理的な攻撃ではない何かの衝撃があったみたいだが、思い出せない。ここはどこだ。」
《多分地獄。目的の場所。だんまり。》
「騙流なのか。そう言えばコンビニで何かを見たような。見たくないけど、見たいような、コワいもの見たさに近い奇妙な感覚だ。」
《宇佐鬼大悟。上を見る。だんまり。》
「上だと。辺りはすごく暗いんだけど、空には明るい光が?って、えええ!?」
大悟の網膜にはこれまで映されたことのない風景画、いや抽象画というべきか。
「そ、空が真っ赤に燃えている。いや煮たぎっている。地面に向かって、沸騰した坊主のような泡が噴いているではないか。」
ポタポタと水滴が落ちてきた。
「あっちぃ!雨じゃない。これはお湯だぞ。このままじゃ、やけどしてしまう、いや茹で蛸になってしまうぞ。どこかに避難しないと。」
騙流はダルマを傘のようにして、熱湯雨を防いでいる。そのため、消音モードになっている。
「こういう時は便利だな。でも一人用だから、オレはヤバいままだ。霊柩車、じゃない冷救車でも呼ばないと。」
「そんなご都合主義車はありません。人間はどこまでもいいとこ取り、オイシイ部分だけを食べて残りは捨て去る。省エネ、CO2削減が聞いてあきれます。」
「ウサミミメイドさん!ここは地獄のアキバ一丁目ですか?」
「アキバというは住居表示はありません。千代田区外神田一丁目が秋葉原駅の所在地です。ちなみにここはサンクスロード10丁目という地獄の辺境です。申し遅れましたが、私は穂芙良という名前の敏腕メイドです。」
「自分で敏腕という場合はたいていドジっ娘属性なんだけど。あんたは、剣徒楡浬と同じ、地獄の住民だな。オレは宇佐鬼大悟、こいつは無籠騙流だ。ふたりとも人間界の魔法伝家出身だ。まずはオレたちをこのリアクション芸人向け熱湯コマーシャル地獄から解放してくれよ。」
「大ピンチなのに、余裕コメント痛みいります。ではご案内差し上げましょう。でも安全な場所かどうかの責任は負いかねます。」
「無責任なオモチャメーカー的な発言はよしてくれ。」
「地獄では自分の身を守るコメントを重視しておりますので。さあ、こちらへどうぞ。」
穂芙良が手を伸ばすとそこにドアノブが出てきて、そのまま開いた。そこには普通の部室のような部屋があった。空間移動魔法の類らしい。
窓はないが明るい部屋。大企業の社長が座るような大きな木製の机と椅子。そこにいる長い黒髪の美少女。スーッと通った鼻筋。少し骨ばった頬。いかにも高貴そうな雰囲気を醸し出し、グレーのセーラー服が落ち着きを与えている。
「ようこそ。灰兎学園生徒会室へ。ワタクシは一条華莉奈と申します。この学校の生徒会長を務めております。人間の分際で、ここまで来られるとは驚いてイキ対馬に行きそうになりましたわ。」
「お嬢様。初対面の人間にそのカタカナ使いは通じない用語と思われます。」
「どこの誰が四十八手使いですの。」
「お嬢様。全然脈絡がありません。」
「あんたたちの言葉遊びにつきあってるヒマはないんだが。」
「つ、つきあう?い、いきなり、このワタクシにコクって、男女交際を要求するとはいい度胸してますわね。こちらにも心の準備が必要なのですが。」
「お嬢様。彼の発言に、コクりと交際要求のかけらもありません。」
「あんたたち。ずいぶん、やっかいな人、いやウサミミたちだなあ。」
「『ずいぶん立ち』とはすごく元気でいらっしゃるのね。そういうのは朝だけかと思いましたわ。」
「お嬢様。これ以上会話を混乱させることはお止めください。」
「まともに話ができるか超不安なんですけど。こちらから一方的に話をさせてもらうぞ。オレのうちには、剣徒楡浬というウサミミがいて、饅頭人に食われてしまった。今のところ、意識はあるが、からだと精神が腐りつつある。楡浬を食った饅頭人が防腐剤を使用していなかったらしい。そのせいで楡浬に腐敗が始まったようだ。こちらで調べたところでは、防腐剤は生徒会長である一条華莉奈さんが所持しているとのことだ。だから、防腐剤をもらうために地獄までやってきたというわけだ。」
「ここにやってきた事情は理解しましたわ。しかし、圧倒的かつ一方的な要求をなさるのね。それが人間流なのかしら。受け入れる女性の体位とか考えないとうまく結ばれませんわよ。」
「お嬢様。未経験なハズなのに、したことがあるような発言は慎んでください。」
「ほ、ほっときなさいですわ。ワタクシにとって、楡浬さんがどうなろうがどうでもいいことですわ。自分の家の都合で人間界に行って、そこでどうなろうが、自家発電ですわ。」
「お嬢様。自己責任と訂正させていただきます。」
「自ら人間界に行って、起こってしまったことを地獄側がどうこうできませんわ。」
「そこをなんとかお願いしたいんだ。だからこうしてここまでやってきたんだ。」
「お願いだけなんて、なんて次元の低い交渉術ですわ。こちらに何のメリットも対価もない買い物はお断り致しますわ。」
「それはたしかにそうだが。こちらから提供できるものなんて何もないし。この騙流を強制労働に置いていくというのはどうだ。」
《そ、そんな勝手な商品提供、ダメに決まってる。だんまり。》
「あらら、これは面白いですわね。ダルマを使って会話をするというおもちゃ魔法ですわね。おこちゃまにはよく似合っていますわ。でも大して役に立たないっぽいですが。役立たずは男子限定販売かと思ってましたわ。」
「そういう方向の解釈はお嬢様限定です。」
「地獄までやってくるとは、度胸はあるけど、ずいぶん図太い輩ですわね。図太いモノは好みですけど。」
「お嬢様。カタカナ語にすると、どうしてもエロい匂いが漂ってきます。」
「さっきからエロいことばかり言ってるようだけど、それって、何かを隠してないか。」
「隠すなんて、そんなことありませんわ。ワタクシは常にオープン。心もカラダもすべて常に丸出しですわ。」
「お嬢様。丸裸という方が少しはオブラートに包まれますが。」
「包まれるモノはよくありませんわ。」
「お嬢様。場合によっては言ってる意味のベクトルが違います。」
「あんた、寝起きはよくないだろう。夜中に目覚めていろんなことを考えてるんじゃないか。」
「そんな猥褻なことだけではありませんわ。」
「別に猥褻とか言ってないし。」
「お嬢様。言わずもがなのことでの議論は不毛です。」
「不毛ではありませんわ。フサフサもふもふですわ。」