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表裏の結界

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 夢だと思ってホッとできない自分が夢について考えた時、ワンステップ上がったところで、そこが終点だと勘違いしてしまう可能性は大いにあった。
 そして、その思いにたがうことなく、
「夢というのは、裏社会への入り口なんだ」
 という結論に達してしまった。
 本当は結論ではなく、そこからさらに思いを巡らせるべきなんだろうが、それができなかったことが、結果的に正彦のターゲットになりえたのかも知れない。
 和人は、今夢を見ている。
「本当にこれでいいのか?」
 自分の中で生じる疑問を打ち消すことはできないでいたが、マイナンバーを操ることで、自分と表世界の住人である千尋、里穂、山本教授、さらには、悪人だと思っている譲二にまで自分の影響を及ぼすことで、裏社会からの影響を遮断できたと思っている。
「これで、夢を見ても裏社会とはかかわりがないんだ」
 と感じることができた。
 それでも和人には不安が残る。
「裏社会とは、これで隔絶できたと私は思うよ」
 と山本教授は語った。
 安心していいのか分からない状態で、和人は安心しきってしまう自分を止めることができなかった。
「夢を見ても、そこには裏社会は存在しない」
 この思いを抱いている時、今までのように裏社会の存在を知っていたはずの数少ない人が、今度は裏社会の存在を完全に否定し、それ以外のすべての人が裏社会を意識するようになっていた。完全に見えないところで逆転してしまったのだ。
 この時、裏社会と表社会の結界は破壊されていた。そのことを一体誰が知っているというのだろうか……。

                  (  完  )



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作品名:表裏の結界 作家名:森本晃次