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パパはロボット

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実はね、ぼくは パパのことを大好きになった出来事があるんだ。
でもね、それは パパには大変なアクシデントだった。

ぼくが、幼稚園に通う頃だから、もうずいぶん前の事だけど……

その日、ぼくは、母さんと買い物の帰り道、手を繋がずに道端の花を摘んではあちらこちらと走っていたんだ。
楽しかったよ。ぽかぽかと春の陽射しが暖かくて 手にはいっぱい黄色や赤い花を握りしめて 家に帰ったらお水あげるんだ なんて言ってはしゃいでいた。
すると、もうすぐ家に着くところか、もう家の前くらいになった時だった。
前の方から何かが向かってきたんだ。それが ぼくよりも大きな犬だとわかるまでに時間はかからなかった。
「こうちゃん、こっち!早く!」
聞いたことのない母さんの声に ぼくは、足が竦んでしまった。
母さんが、ぼくの手を引っぱってくれたんだけど、手が擦り抜けてしまった途端、母さんの声は悲鳴に変わってしまった。
でも、ぼくの腕は、何か強い力で引き寄せられた。そして、大きな壁がぼくを犬から守ってくれた。その壁に犬は キャインと声を上げるほど勢いよくぶつかったみたいだった。

ぼくは、駆け寄ったかあさんの腕の中に渡されると、パパは犬を追いかけて行ったんだ。

凄く速かった。

角を飛び出した犬を捕まえて抱えたパパは、ちょうど走ってきた自動車にぶつかってしまった。
「きゃぁ!」
声を上げたのは、犬の飼い主さんだった。リールが外れて、追いかけてきたんだけれど、
追いつけなかったんだ。
犬もぼくと同じさ。気持ちよい天気で はしゃいでしまったんだね。ぼくが、花を振っていたから きっと見にきたんだ。

だけどパパは……。

自動車の運転手さんは、車を停めて降りるとパパに近づいた。
母さんは、ぼくを門のところに待つように言うと、パパの方へ走って行った。
パパの抱えていた犬は、追いかけてきた飼い主さんを見つけると駆け寄り、おとなしくリールに繋がれていた。

「申し訳ありません」
犬の飼い主さんの声が聞こえた。頭を深々と下げているのが少しだけ見えた。

ぼくには、自動車や大人たちでパパの様子が見えずにドキドキして しゃくりあげるように泣いてしまった。大きな声を上げてはいけない気がしたから 我慢しようと頑張ったけれど、涙がぼろぼろ零れてきて、鼻がひくひくして、手に握った花が萎れてしまうくらい強く握りしめて みんなのいる方を見ていた。

作品名:パパはロボット 作家名:甜茶