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パパはロボット

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パパは、感情は豊かだけれど どことなく温かさがないときがある。
ぼくがもっと小さい頃は、それがどうしてなのかわからなくて 怖く感じたり、寂しかったりして ふたりを困らせた。
でも、その分母さんが抱きしめてくれた。あたたかくていい匂いで、パパの気持ちを優しく教えてくれた。母さんから ふたり分の気持ちを充分感じられた。
力は パパの得意。いつも腕相撲で負けてしまうぼくは、設定を弱めて勝利を味わう。
母さんに見つかると「ずるしないの!」と言われる。その時の母さんは パパよりずっと力強い。

そんなぼくも初めてパパと手を繋いだ時は、驚いてすぐに手を離してしまったらしい。
母さんの手のほうがずっと肌触りが柔らかくて気持ちいい。覚えているのは、たくましい大きな手に握られた時、痛かったんだ。たぶん、その時ぼくは泣いてしまったんだろうな。
ごめんね。パパ。びっくりしただけなんだ、と思う。


どうして、母さんがパパと出逢って結婚したか?
あ、この話はね、パパから聞いたんだ。
だから、パパは「母さんには内緒だよ」ってぼくと約束したんだけど、どうやらパパは、母さんに訊かれて白状してしまったみたい。
まったく、大人って自分勝手なんだから、子どもは困ってしまうよ。
でも、これから話さないと可笑しな家族で終わってしまうね。


母さんは、大学は出たけれど、学んだ学科と違う工学畑の仕事場に就職したんだって。
回りは研究者や技術者。専門用語がわからなくて不安になったり、落ち込んだり… 興味はたくさんあっても楽しさがわからないまま仕事をやめてしまおうかと思ったんだって。

そんな母さんを上司であり博士が試験的にヒト型ロボット(ヒューマノイド)の擬似恋愛の相手役にしたんだ。

始めは、どんな話をすればいいのか? それどころか、いつ話しかければいいのか? そんなことから始まった。そうだよね…… ヒト型をしていても不気味な塊。そもそも母さんは、お喋りが得意とはいえない人だったらしく、何も共通の話がない物との対話は容易ではなかっただろうね。でも、人でないから話せることもあったのかもしれない。

その後、母さんの趣味のデータや仕事に関しての学習データをパパに入力して、一緒に勉強するようになった。パパも進化して感情の受け答えのできる人工知能の能力を入れて、母さんと日常会話は難なくできるようになった。

でも 研究所で共に過ごすだけ。
定時刻には電源を落とし、話も動作も息もしない塊を片付けて帰るだけじゃ気持ちなんて持てるわけない。恋愛ってそういうものじゃないんでしょ?

作品名:パパはロボット 作家名:甜茶