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遅くない、スタートライン 第4部 第1話 11/2更新

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(3)

俺は家に帰ってから考えていた。前妻の彩華が何故…今になって俺達の前に現れるのか、海外から帰って来てるのはバァバから聞いた。でも家はもう売却して、ジィジ達は施設に入り帰る家はない。再婚相手は金持ちなのか?ホテル暮らしなのか?でも…最初に前妻の彩華らしき人物を発見してから、もう3ヶ月は経ってる。3ヶ月もホテル暮らしできるか?あっくんに逢いに来たのか?逢いに来たのなら、名乗ればいいじゃないか。

あっくんにとっては、前妻の彩華は産みの母だ。逢わせないとは言ってない!あっくんが逢いたいと言えば、逢えるように機会を作る。あっくんを引き取りたいってなったら、話は別だが。俺も前結婚生活は至らないところはたくさんあった。それは謝る!そんな事を考えながら、俺は無意識に頭の後ろで腕を組んでいた。

「マサ君…」美裕が俺をこういう風に呼ぶときは、話があるんだ。
「うん。美裕はどう思ってるん?今日の事も含めて」俺は椅子を回転させ、美裕のおなかにタッチした。
「彩華さんがあっくんに逢いたいなら、逢わせてあげたら?あっくんを引き取るって話なら別よ」
「だよな。俺もそう考えてた…あっくんに聞いてみるか?ママに逢いたいかって」
「そうね。逢うなら…ジィジ達も彩華さんに逢いたいんじゃないの?」
「だと思う。でもバァバだけに連絡を取っただけでさ。逢ってないんだって」
「そうなの…あっくんの前に不意に現れないでほしい。それだけは避けて」
「うん。俺さ…バァバに連絡するよ。あっくんが春休みの間ならいいだろう」
美裕は俺の頭をなでて、こう言った。
「うん。あっくんは話せばわかる子よ。パパからよぉく話してみて」

それから数日は、前妻の彩華の姿は気配は感じられなかった。あっくんは春休みは何かと忙しいんだ。スイミングの昇級テストに、お絵かき教室の行事に、空手教室も春休みの間は週2回になっているから。
俺は送り迎えだけで忙しいんだよ"(-""-)"

教室の待ち時間の間に、俺は車の中でノートパソコンで作家業してるぐらいだ。家に帰ったら主夫業もある。美裕も全く家事ができないわけじゃないが、もうできる家事が制限されている。
俺は美裕の出産まで果てないかどうか心配だった。( ;´Д`)

お、あっくんが出てきたぜ。あっくんは今日書いた画用紙を片手に持って、美裕が縫ったお稽古バックを下げて、俺の車の方に歩いてきた。俺は車を出てあっくんの来るのを待った。
「パパ!みてみて」今日書いた絵を俺に見せたかったから、手に持ってたのか。
「おぉ!これ…歌手のMASATOさん」わかってて聞く俺も俺だけど。
「うん。ママがみせてくれたDVDのかいた」
はいはい…今月発売のファクトリーマシャのDVDだな。俺はキャップを上にあげて片手はマイクを持ってる姿だ。
「うまいじゃん!ママに見せてあげなよ。ママもう絵も描けないもんな」
「そうだね!ママおなかおおきいし、このまえもねぇ」
あっくんは楽しそうに話し出した。その時だった…俺は後ろから視線を感じた。

俺は振り向かずに…
「あっくん!先に車乗っててよ。チャイルドシートちゃんとロックしてな。パパ…トランクの荷物見るから」
「うん」あっくんは俺にカバンを預けて、車の中に入った。

俺は振り向いて、指先で方向を示し目線を送った。相手はビックリしていたが…車の後ろの電柱に向かって歩いていた。俺は車をロックし…窓をコンコンと叩いた。
「あっくん!パパ…お仕事の電話してくる。ちょっとだけ待ってて!」
あっくんはわかったのか、手を挙げた。

俺はあっくんが見えるところにいて、相手は電柱の陰にいた。
「彩華さんだろ?」
彩華がかぶっている帽子が震えた。
「俺…怒ってないよ。あきとに逢いたいなら逢えばいいさ」
俺の言葉にすごく驚いているみたいだ。サングラスを指でずらし、俺の顔を恐る恐る見た彩華だ。
「ホント…いいの?」
「うん。でも逢うんなら、お義父さん達の前でだよ。俺も同席する!それが条件だ。単にあきとに逢いたいだけ?それとも引き取りに来た?」彩華は下を向いてしまった。

どうやら…アタリか。
「あぁ…先に謝っておこう。前結婚生活は俺が悪い所がいっぱいあったと思う。ホント申し訳ございませんでした」俺は彩華に頭を下げた。これも驚いてたけど、前結婚生活は俺はこんな風に頭を下げて謝ったことなかった。
「私も悪いとこはあった…再婚してわかったこともあったの。ごめんなさい」
俺もビックリだ。あの彩華が俺に頭を下げた。お嬢で気まぐれでワガママで、プライドも高かったのに。

それから、俺は夕方にジィジ達のいる施設に行った。あっくんはお絵かき教室の後に、あきやくんとふうきくん3人で遊ぶ約束をしていた。楽しみにしてたから中止ってワケにはいかないよ。兄貴達の住んでいる住宅街の中に、住人専用の公園がある。あっくんは公園(住宅兼)の管理人さんに名前を行って、くまさんワッペンを腕につけた。このくまワッペンは、管理人さんの許可をもらって遊んでる証拠になる。有名人の子供達ばかりだ!それぐらいしないとな。俺は3人が見渡せるベンチに座っていた。おやおや…どこの作業員かと思えば、また頭にタオル巻いてさ!顔も泥かセメントかつけて、その人が…誰が福永雅樹だと思う?

「おっす!」俺に向かって手を挙げた福永雅樹一級建築士だ。諒君とこの工事だな!今日は…
「お疲れッす!」俺は頭を下げた。

俺は雅樹兄貴に…前妻の彩華に逢ったこと、ここの遊びが終わったらジィジ達のいる施設で前妻とあっくんが対面することを話した。
「引き取りに来たってワケ?前妻は」
「みたいッすね。あっくんの気持ちもまだ俺は聞いてません」
「あっくんは…どう考えているかだよな。5歳でも意思は尊重してやらんとさ」
「ですよね。美裕も同じ事を言ってたし」俺はため息をついた。

その時だった!
「パパぁ!みてぇ!これにてる?」
あっくんが俺のモノマネをして、自分のキャップをブンブン振って、歌のフリまでした。
これが雅樹兄貴にウケて、雅樹兄貴は大笑いし拍手をした。
「うっめぇ!パパよりうまいぞ。あっくん」って言う"(-""-)"
あっくんは嬉しそうに笑った。

「あっくん…MASATOと美裕さんと暮らしだしてから、見る見る表情が豊かになって体も心も育っただろう」
「はい。それは思う…バァバがあっくんを一生懸命育ててくれた芽があるから。その芽を大事に育てて花を咲かせてやるのが、俺と美裕の役割だと思いました」
「うん。その通りに君達夫婦は役割以上の事を果たしてるさ。だから今あぁやって、あっくんが笑ってるんだろう」
「毎日笑ってますよぉ!俺も美裕も…あっくんが泣くこともあれば俺達も怒ることもある。その繰り返しだけど、家族してんなぁって思いますよ。もうすぐ産まれる妹をすごく楽しみにしてるし、名前も考えてくれてるし」
「うんうん。それだけさ、あっくんは毎日が楽しいんだよ。それはさパパとママがいるからだ」
雅樹兄貴の言葉は、俺の心の中に響いた。