ナルの夏休み エピソード0-0
午前7時半、早めに教室の中に入る。カードを使って、暗証番号を入力する。声帯認識と指紋認識、そして角膜認識をして、複雑なパスワードが一致すればいつでも中学校に入れる。
午前7時40分、だれもいない静かな教室で、今日の授業の予習をする。
床から私が座るイスと机が出てくる。机には画面で操作できるコンピューターがついている。これからオンラインさせ、予習をする。
1時限目、地理の授業。
「人間の脳は、この惑星、地球のあらゆる生物の中で最も良質な物質が生成できることが近年の脳医学で発見されました。その原理は今でも謎です」
殺人、性犯罪からタバコを吸うことで、脳内に強烈な幸福物質が生成される。人間ほど幸福物質が生成する生き物は、この地球上にはいない。
「で、アフリカおよび中東において近年、増加する殺人事件の犯人を捕まえ、生きたまま脳を取り出すという事業が始まっています」
私は、その話を聞いて気持ち悪くなった。
「戸松さん、どうしたのですか。気分が悪いですよ」
「生きたまま人間の脳を取り出すのですか」
「そうです。死んだらすぐに幸福物質の質が落ちますから。生きたまま捕まえて人間の脳を取り出し、そのまま幸福物質をとりだします。なお、タバコは一生やめられないのは、脳内に強烈な幸福感をあたえるからで、タバコをやめたために、ひどいうつ病にかかった人がいるので、禁煙を強いることは人道上問題となりました」
私たちが、とても幸福な生活しているが地球の裏側では悲惨な生活を送っている人たちがいる。何人かの人たちが、その環境を少しでも良くしようとしているが、一向に改善されない。むしろ絶滅するまで悪化する。
「で、政府には65歳以下の人にタバコの販売を禁止しています。タバコは覚せい剤の一つだと解ったからです」
「では、私たちは幸福な生活をして、より生活に余裕がる人たちは太陽系のいたるところに冒険に出るようになりました。それに人類の人口よりも、万能ヒューマノイドロボットやアンドロイドの方が多いです。私たちは単調な仕事から解放され、大部分が警察や警備会社、それに家宅捜査会社、資産監視会社に就職しています。昔の人から見れば極限的な管理社会です」
「あら、住めば都。むかしは自分で自分の命を絶つほど不幸な人もいました。猟奇殺人事件も多発していたし、道徳も退廃していました。で、昔の人よりもはるかに幸福ではありませんか。現代社会のどこがおかしいのですか」
「わかりません。規則が厳しすぎます」
「そうね。アフリカにいってみなさい。とても悲惨な状態だから。今でも人身売買もある。性犯罪も多発している。その性犯罪者の脳を生きたままとりだすことで生計を立てている人もいるのです」
「それでは、その事業が亡くならない限り永久に開発途上国では悲惨な状態が続くのではないでしょうか」
作品名:ナルの夏休み エピソード0-0 作家名:こーぎープリッド