声を裏返さない様に…
「須藤弥生!」
雨音が漏れ聞こえる廊下で、私は振り返ります。
「…フルネームを、大声で呼ぶな!」
竹内は、ゆっくりと近づいて来ました。
「おまえ…今日持ってるよな?」
「な、何を?」
「傘だよ。か・さ!」
ムッとする私。
「朝から雨が降ってる日に、持ってない訳ないでしょう!」
前に立った竹内は、右手を上げて、耳打する動作をしました。
「…協力してやる」
「?」
「相合傘…したいんだろ? 山下と。」
「ど…どうして、それを。。。」
狼狽える私に、竹内が顔を近づけます。
「─ だから…俺を呪うなよ?」
作品名:声を裏返さない様に… 作家名:紀之介