声を裏返さない様に…
「今日は…持ってきてないんだ? 雨具…」
教室の窓から外を眺める山下君の後ろに、私は立ちました。
「だったら…」
声を上ずらせない様に気を付けながら、ゆっくりと近づきます。
「今日 私、か、傘持ってるから、一緒に。。。」
振り返った山下君と私の間に、畳まれた傘が割り込みました。
「…竹内?」
「これ、お前の かーちゃんに頼まれた。」
手を伸ばした山下君が、傘を受け取ります。
満足気に、その場から離れようとする竹内。
反射的に立ちはだかった私は、耳の近くで囁きましたました。
「…呪うからね。」
作品名:声を裏返さない様に… 作家名:紀之介