予知能力~堂々巡り①~
自殺した香澄先生のことを考えていると、見えてこなかったものが見えて気がした。
――彼は、私の子孫というよりも、香澄先生の子孫のように感じる――
と、思った時、それまでモヤモヤしていたものが繋がった気がした。
彼がロボット工学基本基準のことを話した時、彼が未来人である予感があったではないか。
自分が未来から来たということを言いたかったのかも知れない。
ただ、その未来というのは、本当にこの次元からの延長上の未来なのだろうか?
沙織は、自分の未来を考えた時、違う次元を感じていたが、なぜか自然な気がした。
未来を考えると、違う次元に思えて仕方がない理由、いろいろ考えているうちに、ふと気が付いたのだ。
「堂々巡りを繰り返している」
そう、いろいろなことを考えていると、どうしても堂々巡りを繰り返すことになる。つまりは、堂々巡りを繰り返さず未来に行くには、
「次元を超えるしかない」
と考えたのだ。
沙織は、そう思うと、堂々巡りの原因が、もう一人の自分、つまりは、
「香澄先生が中にいるためだ」
と感じた。
そこまで分かってくると、三十歳になった今、また義之が自分の前に現れるのではないかと感じた。
今度は、沙織の持っている「予知能力」が働いた。
偶然だったが、義之が現れる前兆のようなものを感じた。
そう、数年前に初めて沙織の前に現れた義之。あの時の感覚が沙織の中にあり、無風の空気の中、沙織に忍び寄ってくるのだった。
( 完 )
2
作品名:予知能力~堂々巡り①~ 作家名:森本晃次