遅くない、スタートライン 第3部 第5話10/14更新
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俺と美裕はお互いの顔を見た。テントの奥で…高茂久院長ご夫妻と話をしたのだが。
「5月にモアちゃんが産まれたら、手狭になるだろう?何か対策考えてる?福田ご夫妻」
「もしまだ…考えていなかったらどうかな?」と切り出された。
また…兄貴達がテントの中に入ってきた。どうやら…俺達の話を知っているみたいだ。
「いやぁ…俺知らなかったです。今の家を買ったのはマンションを買った不動産会社で、その当時何も言わなかったし、いやぁビックリだ」マサ君はホント驚いていた。私もだが…
「たぶん、君に売った物件が最後だったんじゃないかな?その図面の土地もその不動産会社の所有だったんだが、その土地を高茂久グループの不動産部が買ったんだ。収益物件としてさ!美裕さんのカフェもあるし、あまり動けないだろう?どうだろうか」と高茂久院長に切り出された。
うーん ( 一一) 確かに手狭になる。あっくんの部屋も作ってやりたいし、今は俺達と一緒に寝ているが、いつまでも一緒に寝るってワケにはいかないと思っていた。モアちゃんが産まれたらベビーベッドだっているしな。うちはリビングは広いが、書斎部屋と主寝室しかないんだ。あと1室はウォークインクローゼットなんだ!子供が産まれたらって思って買ったんじゃないから。俺も美裕もしばらくはその部屋数でいけると思った。
うーん ( ;∀;)悩む。高茂久院長がそんな俺を見て…
「お値段かな?」俺はうなづいてしまった。高茂久グループの販売だから俺に手が届くかと思った。
「これぐらいでどう?」真理子第2副院長先生がノートに書いた数字を見た。
「今の家をこれぐらいで、高茂久グループで買いたいんだが。いい所だからね!私の別宅にしたいんだ」
ッゲ( ;∀;) 別宅ぅ?
「うん。周りの環境もいいし、また御一人ファーマーさんしたいんだって。今の家の庭はもう作物で一杯なのよぉ!私のガーデニングの場所まで侵入してきそうで。あ、別れて暮らすんじゃないわ!私も遊びに行く」
と真理子第2副院長先生が言った。
兄貴達はまた【うんうん】とうなづいた。承諾しろおぉって?俺もいい話だと思うけど。美裕はぁ?
美裕はさっきから地図を見ていた。今住んでいるところより、カフェもまた近くなるし、あっくんの幼稚舎のバス停も近くなる。この土地って…何平米だ?雅樹兄貴が青写真を持ってきた。
「ね!千尋さんも呼んでよ。美裕ちゃん」とあの…マァスマイルを美裕にした。
美裕は顔を引きつらせながら、千尋さんに電話した。
千尋さんも驚いていた。驚くって!雅樹兄貴が持ってきた青写真は設計図と土地の写真だ。また合わせて周辺の土地も撮影していた。それを見ていた千尋さん…しばらく考え込んでいたが。
「あの…高茂久院長!この土地って旧XXXX会社の土地でしたかね?確かバブル時代に羽振り良くって」
「うん!そうなんだ。MASATO君が家買った不動産屋がその当時ムリして買ったんだよ。それがコゲついてさ、負債物件になってうちのグループが買い取ったんだ。さすが千尋さんだね!覚えていたか!まだご両親がご健在の時の話かね?」
「はい!あぁ…うちの亡くなった父は当時のXXXX証券に勤めてましたの。仕事柄…不動産や株など詳しくて」
美裕も思い出したようだ。(笑)
「ほぉ…XXXX証券って一流じゃないの。で、亡くなったお父さんからその話を聞いたの?千尋さん」
「はい。私その時…大学の3回生で経済学部にいたんで。興味あったので」
「そーだったね。お父さんと千尋さん、いつも難しい話してたぁ」思い出して笑った美裕だ。
「そこでだ…千尋さん!千尋さん達も良かったら買わない?駅前のマンションなら高茂久グループに任せてもらったら、いい値段で売れるよ。今…福永雅樹一級建築士がまた新たに手掛けているタイプの家なんだけど!」
エェ…雅樹兄貴!店舗建築の他にまだ何かやってるの?俺と美裕は驚いた。
家に帰ってから、千尋さんちに上がりこんで話をした俺達だ。千尋さんと雄介義兄さんは自分達のマンションの部屋を見渡しながら…
「新築で買ったのよね。大樹が6歳で有彩が3歳だった」
「うん。当時駅前のマンションなんて高くて買えないと思ってたの。それが新古物件でね」と雄介義兄さんが話し出した。
「でも…もうあちこち修繕しなきゃいけないし。千尋さんとどーしよと言ってたんだ」
「修繕ってお金かかるのよね。あなたたちはどうなの?あっくんだってお部屋欲しいよね」
「うーん。今は俺達と一緒に寝てるけど、そのうち1人で寝るようになるし」
美裕がふすまをそっと開いて、寝ているあっくんを見た。あっくんは例のごとく遊び疲れて和室に布団を引いて寝かせていた。また姫子もそばで寝ていた。
「2件家を建てることを思えば、すごくリーズナブルな価格だと思う。間取りも完全同居じゃなく、ちゃんと独立した世帯でしたね。あの設計図!福永雅樹一級建築士は一体どーいう頭してんだ?」
「すごいよね!共用廊下を挟んでちゃんとドアがあって、各家庭に行き来できるんだもんね。竜生兄貴がこれから赤ちゃんが産まれたら、近くに千尋さん家族がいたらすごく助かるし、千尋さん達もカフェにも通いやすじゃないかって言ってたわ」
そうなんだ…現在は、朝は8時半にカフェに雄介義兄さんが運転する車で30分かけて出勤している2人だ。帰りは午後6時にまた車で駅前のマンションに帰る生活を送っている。姫子も同じだ!高茂久院長が提示してくれた物件なら、俺達が住んでいる家からカフェに行くまでにその物件があるそうだ。俺…知らなかった!いつもその道を通っているのに、千尋さんはそのご近所にまた友達がいるらしい。だからすぐ思い出したんだね?
「ここなら…あっくんの幼稚舎のバス停まで歩いて行けるよ。今…車や自転車で10分ぐらいでしょ。これから冬だし坂道は危ないかと思ってたのよね。カフェもこの距離なら歩いて5分じゃない?」美裕は地図を指さした。
「だよな!価格的にはどうですか?駅前だと…」と俺達は話し出した。
その晩の話し合いで…俺達と千尋さん達は家を購入することを決定し、すぐに高茂久院長に電話した。ップップ…(*^^*)噂通りの人だ。一旦電話を切ってすぐに電話がかかってきてた。もう高茂久グループ不動産部が冬休みに入っているが、高茂久院長(高茂久会長)の直属の部下に連絡を取ってくれた。また雅樹兄貴からも直コールが来て、今日は青写真だったが、後日に設計図とモデル模型をお見せしたいから、また福永家にお越しくださいとまで言われちゃったよ。あぁ…決まる時に一気に決まるんだな。家買うって!今の家もそうだ(*^^*)
あっくんをベッドに運んで、俺はリビングに下りた。美裕はキッチンでお茶を入れていた。
「今日1日ですごい事になったね。パパ」
「うん。まさか家買うとは思わなかった!あ、この前の収録の時に雅樹兄貴から高茂久院長が俺に話があるって言ってたの聞いてたのに、俺…忙しくて忘れてたんだよ」
「そーなの!ま…時期的にいいタイミングだったね。モアちゃん産まれた後ではこう話は進まないわよ」
作品名:遅くない、スタートライン 第3部 第5話10/14更新 作家名:楓 美風